病院の能力と着院前時間が血栓除去術の転帰に及ぼす影響:日本のJ-ASPECT研究(2013~2016)

公開日:

2022年4月14日  

最終更新日:

2022年4月14日

Influence of hospital capabilities and prehospital time on outcomes of thrombectomy for stroke in Japan from 2013 to 2016

Author:

Kurogi A  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Graduate School of Medical Sciences, Kyushu University, Fukuoka, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:35228551]

ジャーナル名:Sci Rep.
発行年月:2022 Feb
巻数:12(1)
開始ページ:3252

【背景】

脳主幹動脈閉塞に対する血栓回収は日米とも急性脳梗塞の3%にしか実施されていない(文献1,2).その原因の一つとして血栓回収が直ちに実施出来る高規格の包括的脳卒中センター(CSC)への患者搬送時間の長さがあげられる.本研究は,本邦のJ-ASPECTと総務省消防庁のデータベースを元に,中等級機能を有する血栓回収医療施設が増えることが血栓回収療法後の転帰に与える影響を検討したものである.対象は2013年から2016年にJ-ASPECT施設に救急搬送された急性期虚血性脳卒中約11万例で,血栓回収が実施されたのは前期(2013~2014)1,461例,後期(2015~2016)3,259例であった.

【結論】

全脳梗塞患者中の血栓回収実施率は前期2.7%,後期5.5%と増加していた.この間,血栓回収可能施設数は170から206に増加していた.各血栓回収施設のCSC施設スコア(0~25点)中央値は両期とも19点(中等級機能)であったが,各施設当たりの常勤血管内治療医は後期で減少していた(0.89 vs 0.82).救急覚知-施設収容時間は両期で差はなかった(33 vs 32分).
血栓回収実施患者では,退院時mRS 0~2は前期28.7%,後期34.2%と改善していた.前期では,高いCSCスコアはmRS良好と,長い救急覚知-施設収容時間はmRS不良と相関した.後期では両者とmRS間に相関はなかった.

【評価】

本研究は,本邦において2014年から2016年のわずか2年で,血栓回収可能施設が2割も増加していることを明らかにしている.これは,この間に,米国心臓協会/脳卒中協会に続いて,日本脳卒中学会の「脳卒中治療ガイドライン2015年」でも,急性脳主幹動脈閉塞に対する血栓回収がグレードAとして推奨されたことを反映しているものと思われる.
一方でこの間,血栓回収可能施設当たりの常勤血管内治療医はわずかに減少しており,急速な需要の増加に専門医の育成が追いついていなかったことを示唆している.
興味深いのは本研究対象期間の前期2013~2014年では,血栓回収後のmRSはCSCスコアが高い施設(より高機能の包括的脳卒中センター)で実施したものほど,また救急覚知-施設収容時間が短いほど良好であった.これらは,従来の本邦からの報告と良く一致している(文献2,3).
ところが,本研究対象期間の後期2015~2016年ではそのような関係は認められていない.この点に関して著者らは,本邦における血栓回収可能な医療機関の不足という現状況下において,CSCスコアが中等級(17~21点)の機能を有する血栓回収可能施設の増加が血栓回収治療へのアクセスを増加させ,治療転帰を改善させているのであろうと結論している.しかし,この結果には多くの因子が関与していると思われ,その正確な評価は難しそうである.
いずれにせよ,本研究対象期間最終年から既に6年が経過しているので,その後の経過でどう変化しているのかを見極めたい.また,日本神経血管内治療学会等は血栓回収療法の実施医を増やすために,それまでは実施医を脳血管内治療専門医に限定していたが,2020年5月からはより広げて機械的血栓回収実施医の認定を開始した(文献4).これによる血栓回収治療実施者の増加が本邦の急性期虚血性脳卒中治療の内容と転帰にどのような影響をもたらしているのか,今後明らかにされることにも期待したい.

執筆者: 

有田和徳