発作反応型電気刺激(RNS)は小児や若年者の難治性てんかんにも有用:米国5施設35例の解析

公開日:

2022年4月14日  

最終更新日:

2022年4月14日

Real-World Preliminary Experience With Responsive Neurostimulation in Pediatric Epilepsy: A Multicenter Retrospective Observational Study

Author:

Nagahama Y  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, University of California Los Angeles, Los Angeles, CA, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:34528103]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2021 Nov
巻数:89(6)
開始ページ:997

【背景】

発作反応型電気刺激(RNS)は脳表あるいは脳深部に留置した電極で脳波を常時記録し,てんかん発作波を自動検知して,電気刺激を行い,発作を抑制する装置である.最初のRNS装置であるNeuroPaceは2013年にFDAの認可を受けており,米国では既に2,000例近くの症例蓄積がある.成人での有効性に関してはRCTを含む幾つかの大規模シリーズの報告があるが(文献1,2,3),小児では少数例の報告に留まっている(文献4,5).本稿はUCLAなど米国5教育施設で実施された25歳以下の患者35人(18歳未満の小児は3歳児を含む17人,18歳以上の若年成人は18人)に対するRNSの効果と安全性の報告である.

【結論】

追跡期間は平均1.7年(0.3~4.8年)であった.若年成人の3例のみに追加手術を要する合併症が生じた(感染2例,電極損傷1例).刺激が継続されていた32例での効果は,2例(6%)でけいれんが消失,4例(13%)で90%以上のけいれん減少,13例(41%)で50%以上のけいれん減少,8例(25%)で50%未満のけいれん減少,5例(16%)で改善なしであった.32例中19例(59.4%)で50%以上のけいれん減少が認められた.
本シリーズの小児と若年成人の間で,RNSの効果と副作用に差はなかった.成人を対象としたRNSの過去の報告97例(文献1)と本シリーズ全体35例の比較でも差はなかった.

【評価】

RNSは薬剤抵抗性てんかん患者のてんかん焦点近傍に置かれた電極で脳波を持続的に記録して,発作性電気活動を捉えて,同じ電極を通して電気刺激を加えて,てんかん発作を止める装置である.この装置は深部電極あるいは脳表ストリップ電極用に2つのポートを持ち,各電極は4チャネルを有している.成人に対しての有効性と安全性については既に幾つかの報告がある(文献1,2,3).このうち成人の薬剤抵抗性内側側頭葉てんかん111例に対するRNSの治療効果については,2017年に報告されている(文献3).これによれば平均6.1年の追跡期間で,最終観察時の発作減少率は70%(中央値)であった.29%の症例で6ヵ月以上,15%の症例で1年以上の発作消失を認めている.手術による合併症は創部感染が11.7%,電極損傷が6.3%,脳出血が2.7%の症例に認められている.
本研究では,25歳以下の若年成人や18歳未満の小児でもRNSが有効で安全な難治性てんかんに対する治療法であることを明らかにしている.ただし,本RNSの刺激デバイスは頭蓋骨上にくぼみを形成して設置するため,低年齢児ではデバイスの適切な設置の困難さや感染のリスクに加えて,頭蓋骨の発達に伴う合併症の発生が気になるところである.今後も長期の観察が必要であろう.
本RNSは,2022年現在,本邦での臨床使用は承認されておらず,日本てんかん学会,日本脳神経外科学会,日本てんかん外科学会が早期導入を要望中である.
おそらく近い将来,本邦でも切除外科が困難な難治性てんかんに対する電気刺激治療法として,迷走神経刺激,視床前核刺激,そしてこのRNSと3種類の手法が揃うことになるであろうが,それぞれの使い分けをどうするかという治療戦略も今後明らかにされる必要性がある.

<コメント>
2012年~2019年の米国のてんかんセンター(レベル3および4)における治療内容の変遷をみた報告がある(文献6).術式別の手術数の推移をみると,この期間に,緩和術のうち脳梁離断術とVNSが有意に減少しているが,レベル4施設に限ってみれば,VNSの減少のかわりに,定位的レーザー間質温熱療法(LiTT)と本論文で取り挙げられたRNSが増加している(2016年から2019年で61%と114%の増加).RNSに関しては小児例においても有意に増加している.興味深いのは,てんかん焦点切除に至らなかった頭蓋内電極埋込症例が増加していることで(2016年から2019年で102%の増加),このことは,定位頭蓋内脳波の普及を反映していると同時に,切除を前提としない,LiTTあるいはRNSありきの頭蓋内電極埋込が増加していることを推測させる.
成人のみならず小児の難治性てんかん患者においても,これらの新しい治療法による福音がもたらされるよう,本邦でも当該治療機器の早急な保険適応承認が望まれる.
(広島大学脳神経外科,広島大学てんかんセンター 飯田幸治)

執筆者: 

有田和徳