MRIでの動脈瘤壁全周造影はコイル治療後再発の独立した予測因子である

公開日:

2022年6月8日  

最終更新日:

2022年6月9日

Association of circumferential aneurysm wall enhancement with recurrence after coiling of unruptured intracranial aneurysms: a preliminary vessel wall imaging study

Author:

Hara T  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery and Interventional Neuroradiology, Hiroshima City Asa Citizens Hospital, Hiroshima, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:35594885]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2022 May
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

近年,MRIによる脳動脈壁の造影検査は,動脈硬化,解離,血管炎,壁内炎症の検出目的で実施されることが増えている(文献1,2).一方,動脈瘤コイル治療後の再発の予測因子として,従来から報告されている年齢,瘤径,ネック径,塞栓率以外に,瘤壁の炎症細胞浸潤の存在が指摘されている(文献3).広島市安佐市民病院のHaraらは,手術前に造影MRI検査が実施された67例(67個)を対象に,瘤壁の造影所見とコイル治療後の再発状況を対比した.コイル治療翌日のMRAと比較して追跡時(6,12,24ヵ月)のMRAで脳動脈瘤内腔の拡大があったものを再発と定義した.

【結論】

治療前の造影MRI検査における脳動脈瘤壁の造影パターンは,全周造影14.9%,部分造影29.9%,非造影55.2%の頻度であった.
経過観察MRAでは18例(26.1%)に再発(コイル・コンパクション12例,動脈瘤の増大6例)が認められた.単変量解析では,脳動脈瘤径,アスペクト比,後方循環脳動脈瘤,体積塞栓率,瘤壁造影パターンが,再発と有意に相関した.3つの瘤壁造影パターン内では全周性造影が再発と相関した.多変量解析では瘤壁造影パターンと体積塞栓率(<25%)が再発と相関した(OR 14.2,p=.01とOR 8.6,p<.01).

【評価】

本研究は,従来報告されている体積塞栓率と並んで,術前の造影MRIにおける脳動脈瘤壁の全周性造影パターンが脳動脈瘤コイル塞栓術後の再発因子であることを明らかにしている.明快な論文である.
未破裂脳動脈瘤において,MRIでの脳動脈瘤壁の造影所見は,炎症と血管新生を伴う動脈硬化性の壁肥厚を反映していることが示唆されている(文献1,2).さらに脳動脈瘤壁の造影所見は増大,ブレブ形成,破裂と関連することが報告されている(文献4,5,6,7).一方,最近の動物実験の報告では,コイル塞栓後の再発には,血管壁の平滑筋の障害とリンパ球やマクロファージなどの炎症細胞浸潤が関わっていることが示されている(文献3,8).
本研究結果は,炎症細胞浸潤がある脳動脈瘤においては,コイル塞栓術治療後も炎症活動が維持されているため,脳動脈瘤内壁の内皮化が遅延し,同時に更なる壁の変性,炎症の亢進が進む結果,再発(再開通あるいは増大)しやすくなる機序を類推させる(文献8).著者らは,MRIで壁の全周性造影が認められる未破裂動脈瘤に対しては,フローダイバーティング・ステントの使用が従来のコイル塞栓術より脳動脈瘤頚部の内皮化促進のための足場になるかも知れないと推測している.
本研究の発見は多施設前向き研究で検証されるべきであるが,再現性が得られれば,今後,未破裂動脈瘤における治療選択やコイル治療後の追跡に大きな影響を与える可能性がある.

<著者コメント>
脳動脈瘤壁の造影効果は,病理学的検証により,瘤壁の動脈硬化性変化,炎症細胞浸潤,新生血管の存在と関連していると考えられている.脳動脈瘤コイル塞栓術後の脳動脈瘤の安定性(治癒するのか,再発するのか)を予測するのは,依然として臨床的な挑戦領域である.塞栓術後に稀ながら再増大を生じる難治性の脳動脈瘤も経験されることから,そのような症例では塞栓術後に何らかの不都合な病態が発生していることが推察される.未治療の未破裂脳動脈瘤では,局所的な造影効果を有する脳動脈瘤でブレブが形成されやすいなど,瘤壁の造影効果が脳動脈瘤の不安定性を示唆しているというデータがある.一方で塞栓術後に再発する脳動脈瘤は,全周性に造影効果を呈しているという興味深いデータも得られている.コイルが脳動脈瘤内に挿入されることで,脳動脈瘤壁の炎症の状態に変化を起こしうるのか,そうであればフローダイバーティング・ステントを用いて瘤内にコイルを挿入しない治療は理想的な治療法であるのか?今後は,脳血管内治療後の瘤壁の造影効果の変化にも注視していくべきであろう.
このように脳動脈瘤壁の状態を反映しうるMRI血管壁イメージングの発展は,病態に応じた治療法の選択に寄与できると期待している.(広島市立北部医療センター安佐市民病院 脳神経外科・脳血管内治療科 松重俊憲)

執筆者: 

有田和徳