非高度狭窄(NASCET<70%)でもMRIにおける複雑性頚動脈プラーク所見があれば脳梗塞再発のリスクは高い:CAPIAS試験

公開日:

2022年6月21日  

最終更新日:

2022年6月27日

Complicated Carotid Artery Plaques and Risk of Recurrent Ischemic Stroke or TIA

Author:

Kopczak A  et al.

Affiliation:

Institute for Stroke and Dementia Research, University Hospital, LMU Munich, Munich, Germany

⇒ PubMedで読む[PMID:35523659]

ジャーナル名:J Am Coll Cardiol.
発行年月:2022 Jun
巻数:79(22)
開始ページ:2189

【背景】

線維性被膜の破綻,被膜内出血,壁内血栓を有する複雑性頚動脈プラーク(cCAP,AHA-タイプVI)を有する非高度狭窄性頚動脈病変の脳梗塞リスクについては充分に判ってはいない.本稿はドイツ4大学で実施された前向き追跡研究である.対象は単一頚動脈領域の虚血性脳卒中を呈し,頚動脈エコーで非高度狭窄性(NASCET<70%)で2 mm以上の頚動脈プラークを有する患者で,造影剤を使用した精細なMRI頚動脈イメージング(文献1)が実施された196例.このうち104例が原因不明(潜因性)の虚血性脳卒中と判断された.196例中56例(29%)が同側のcCAPを示し,140例では示さなかった.

【結論】

追跡期間は1年以上,中央値は30ヵ月であった.21例に再発事象(虚血性脳卒中またはTIA)があった.100人・年当たりの全再発事象発生率は,全196例ではcCAP群9.50,なし群3.61で有意差があった(p=.025,HR2.51).病変と同側の再発事象の場合,HRは3.31とさらに高くなった.潜因性虚血性脳卒中104例でも全再発事象発生率はcCAP群10.92,なし群1.82で,有意差があった(p=.003,HR5.60).
潜因性虚血性脳卒中例では,線維性被膜破綻とプラーク内出血の存在は再発事象発生の有意のリスク増加因子であった(HR4.91,p=.018とHR4.37,p=.026).

【評価】

本研究の対象患者では,虚血性脳卒中発症後10日以内に,3TMRI,頚動脈専用コイル,造影剤を使用した複数シークエンスのMRI頚動脈イメージングが実施されている.虚血性脳卒中のうち心原性脳塞栓,大血管動脈硬化性脳梗塞(アテローム血栓性脳梗塞),小動脈関連脳梗塞(ラクナ梗塞)を除外した潜因性虚血性脳卒中患者は104例であった.この104例のうち,MRI頚動脈イメージングで複雑性頚動脈病変を有していたのは32例(27%)と,ほぼ従来の報告に一致していた(文献1,2).有していなかった72例に比較して,複雑性頚動脈病変を有していた32例では,その後の再発事象(虚血性脳卒中またはTIA)のリスクは有意に高いことが明らかになった(HR5.60).複雑性頚動脈病変の3つの構成要素(線維性被膜破綻,プラーク内出血,壁内血栓)(文献3)のうち線維性被膜破綻とプラーク内出血の2つが再発事象の発生と有意に相関していた(HR4.91とHR4.37).線維性被膜の破綻は,本研究で使用されたような高精細なMRI頚動脈イメージングでなければ発見されない可能性があるが,プラーク内出血は1.5TMRI,通常の頚部コイル,非造影T1強調像でも検出が可能であり,同病変の臨床的意義は大きい(文献4,5).
潜因性虚血性脳卒中のうち大部分を占めるESUS(塞栓源不明の脳塞栓症)は,ラクナ梗塞でない,虚血病巣を灌流する頭蓋内・外の血管に50%以上の狭窄性病変がない,高リスク塞栓源心疾患がない,脳梗塞を来す他の特異的な疾患(血管炎,動脈解離など)がない の4項目全てに該当する場合に診断される(文献6,7).ESUSは脳梗塞の約25%を占めているが,その適切な管理は未だに明らかになっていない.最近,DOACの再発予防効果に関するトライアルも実施されたが,いずれもアスピリンを超える再発抑制効果を示してはいない(文献8,9).
今後ESUSを含めた潜因性虚血性脳卒中患者に対してMRI頚動脈イメージングを積極的に実施することで,潜因性虚血性脳卒中に対する非高度狭窄性の複雑性頚動脈病変の寄与度が明らかになるものと思われる.また,複雑性頚動脈病変に対するより積極的な薬物療法やステントを含めた手術療法の意義も今後の前向き研究で明らかにされることを期待したい.

執筆者: 

有田和徳