WHOグレード2髄膜腫全摘後はアップフロント放射線照射か再発確認後放射線照射か:傾向スコアマッチングによる解析

公開日:

2022年7月8日  

最終更新日:

2022年7月9日

Adjuvant radiation versus observation with salvage radiation after gross-total resection of WHO grade II meningiomas: a propensity score-adjusted analysis

Author:

Momin AA  et al.

Affiliation:

Cleveland Clinic Lerner College of Medicine of Case Western Reserve University, Cleveland, OH, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:34624866]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2021 Oct
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

WHOグレード3髄膜腫では全摘出後アップフロント放射線照射が行われるのが一般的であるが,異型性髄膜腫などのグレード2髄膜腫に対する至適な補助療法については一定の合意はない.クリーブランド・クリニックのチームは1996年以降に全摘出が達成された160例のグレード2髄膜腫を対象に後方視的検討を行った.このうち39例は手術後アップフロントに摘出腔へのIMRTが実施された(補助照射群).残りの121例は経過観察された.経過観察群で再発が認められた37例のうち32例(26.4%)に救済照射が施行され(IMRT:18例,SRS:14例),5例には再手術が実施された.追跡期間中央値は42ヵ月.

【結論】

初回手術から照射(補助照射あるいは救済照射)後の再発までの期間をRFFSとした.
経過観察群121例の3年,5年,10年PFSは75.1,65.6,45.5%で,救済照射群32例の3年,5年PFSは81.7と61.3%であった.
補助照射群39例の3年,5年PFS/RFFSの86.1,59.2%に対して,経過観察(再発後救済照射)群の3年,5年,10年RFFSは97.7,90.3,87.9%と有意に長かった(p<.001).傾向スコア法で調整後と逆確率重み付け法で調整後のCox回帰分析では,経過観察(再発後救済照射)群の方が,補助照射群よりもRFFSは長かった(共にp<.01).

【評価】

WHOグレード2髄膜腫の亜全摘例に対する補助照射治療の有効性は確立しているが,全摘出例に対する補助照射治療の有効性に関しては議論が続いている(文献1,2,3,4).
本研究では,WHOグレード2髄膜腫全摘例に対してアップフロントに補助照射が実施された39例と,経過観察して再発に対して救済照射ないしは再手術が実施された121例を後方視的に比較したものである.本研究では補助照射か経過観察(+再発後救済照射)かは各症例の担当者に任されており,このため,両治療群間で多くの交絡因子が存在していることになる.また,救済照射群では再発症例を対象としているため,よりアグレッシブな症例が多く,補助照射群と救済照射群の単純比較は出来ない.このため,著者らは従来から用いられているPFSと共に,初回手術から照射(補助照射あるいは救済照射)後再発までの期間を照射失敗なし生存期間(RFFS)と定めて評価した.また,傾向スコア(PS)法で調整後のCox回帰分析と逆確率重み付け法(IPTW)で調整後のCox回帰分析を行っている.この結果,通常のPFSでは2群間に差は無かったが,RFFSは経過観察群(+再発確認後救済照射)の方が長く,Simpson Grade(1,2,or 3)で調整後でも長かったという.
WHOグレード2髄膜腫の全摘出例に対するアップフロント補助照射治療に警鐘をならす重要な発見と思われる.
また,本シリーズでは経過観察群121例のうち45.5%は10年後も再発なしで生存しており,手術後のアップフロント補助照射症例の約半数はリスクを伴う不必要な放射線照射を受けていたことになる(文献5,6).さらに,照射方法に関しても,アップフロント補助照射では摘出腔全体の辺縁0.5~1.5 cmに対して54.0 Gy/30 fr.が照射されているが,救済照射では約44%(12/32例)で再発巣をターゲットとしたSRSが実施できているので,不要な部位への照射を避けうるというメリットがある.
一方,経過観察群ではドロップアウトとなって,再発腫瘍が大きくなり,症状が出てから受診するケースが出てくるリスクは十分に考慮されなければならない.
2022年6月現在,全摘後のWHOグレード2髄膜腫に対する経過観察とアップフロント放射線照射(59.4 Gy/33 fr.)の米・日・加を中心とする国際的なランダム化比較試験(III相)が進行中である(文献7).一次アウトカムはPFSとされている.2027年が試験終了であり,その結果が明かされるのは,まだ大分先である.それまでは,WHOグレード2髄膜腫全摘後の症例では,追跡からドロップアウトしないように注意しながらMRIで丁寧に経過観察するのが良さそうである.
一方現在,髄膜腫の再発に関連する分子・遺伝学的特徴も少しずつ明らかにされつつあり(文献8,9,10),将来はこれらの情報が,全摘後WHOグレード2髄膜腫に対する放射線照射のタイミングに影響を与える可能性がある.

執筆者: 

有田和徳

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