キアリ1型奇形の3病型:フランスにおける255例の階層クラスター解析

公開日:

2022年7月8日  

最終更新日:

2022年7月10日

Chiari malformation type I surgery in children: French multicenter 10-year cohort

Author:

Mazerand E  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Angers University Hospital, Angers, France

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ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2022 Jun
巻数:Online Publication
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【背景】

キアリ1型奇形は小脳扁桃が大孔から5 mm以上下降している病態である.小児では成人より多く,1,000人に約1人の割合で認められる.咳によって悪化する頭痛,失調,脳幹機能障害,運動・感覚障害が典型的な症状である(文献1,2,3).本病態に対しては種々の手術法があるが,その適応については一定の見解はない.本研究は,キアリ1型奇形の病態を明らかにし,適切な治療戦略を導き出すために,フランスの8ヵ所の小児脳神経外科センターで実施された後方視的研究である.対象は2008年以降10年間で手術が施行された18歳未満の255例(平均9.6歳).脊髄空洞は65%で合併していた.

【結論】

手術は後頭蓋窩減圧+硬膜形成65%,扁桃切除13.7%,第4脳室ステント5.9%などであった.
シカゴ・キアリ・アウトカム・スケール(13~16点は改善を意味,最高16点)は術後3ヵ月で平均14.4点,12ヵ月で14.6点と良好であった.年齢と頭蓋頚椎移行部の解剖学的パラメター(大孔の大きさ,Klausインデックス,歯突起後屈の程度,扁平頭蓋の程度,pB-C2距離,小脳天幕角度,小脳扁桃下垂距離)を元に階層クラスター解析を行った.その結果,患者はその発症機序によって、クラスター1:狭い後頭蓋窩による全般的圧迫,2:頭蓋底陥入による前方からの圧迫,3:大孔閉塞の3群に大別された.

【評価】

本研究で示唆されたキアリ1型奇形の3つのクラスターの特徴をより詳細にみると,遺伝子異常はクラスター1,2でより多く(26,18,6%,p<.001),発達障害はクラスター1,2でより多く(39,25,5%,p<.001),水頭症はクラスター1,2でより多く(9,12,4%,p=.08),睡眠障害性呼吸はクラスター1,2でより多く(34,33,19%,p=.05),脊髄空洞症はクラスター3でより多かった(52,51,65%,p=.07).
後頭蓋窩減圧の効果はクラスター1で最も高かった.硬膜内手技はクラスター2では有効性が低かった.
今後,このクラスター分類の有効性について,外部検証が必要である.また,現在,キアリ1型奇形に対する手術として,後頭蓋窩減圧,硬膜スプリッティング術,硬膜形成術,小脳扁桃切除術,第4脳室ステント術,後頭頚椎固定術などが実施されている(文献4,5).本研究はこのクラスター分けに基づいた治療アルゴリズムの策定を視野に入れてはいたようであるが,その完成度は低い.それぞれのクラスターに対する治療の第一選択がどれなのかは,より多くの症例を用いてこれから検討すべき課題であろう.

<コメント>
Chiari malformation type Iの外科的治療適応に関しては決まったガイドラインはない.施設や医師の経験値によって,手術適応や出術手技が異なっている.この研究では、後頭蓋窩の構造、大孔の大きさ,歯突起等の前方成分の圧排状況などを数値化した上で階層クラスター解析の手法を用いて、Chiari malformation type Iを3つのクラスターに分類している.クラスター2は頭蓋底陥入による前方からの圧排が強いグループであるが,硬膜内操作手技は効果的でなかったとの結果は、今後治療適応や手技を決定する上で重要な知見である.著者らが述べているように今後,前向き多施設研究が必要と考える.(鹿児島市立病院脳神経外科 大吉達樹)

執筆者: 

有田和徳

参考サマリー