ADAPTの吸引カテーテルは内径が太ければ太いほど有利か:サウスカロライナ大学1,004例の経験から

公開日:

2022年7月8日  

最終更新日:

2022年7月10日

Impact of Increasing Aspiration Catheter Size and Refinement of Technique: Experience of Over 1000 Strokes Treated With ADAPT

Author:

Kasab SA  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Division of Neuroendovascular Surgery, Medical University of South Carolina, Charleston, South Carolina, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:35411873]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2022 Jul
巻数:91(1)
開始ページ:80

【背景】

本稿著者らのグループは2020年1月に,過去6年間に経験した510例を解析して,急性期の脳主幹動脈閉塞に対するADAPTにおいては,太い内径の吸引カテーテル(この時は最大0.068インチ)を使用した方が再開通までの時間が短く,機能予後が良好であることを報告した(文献1).本研究ではその後2年間に経験した症例を加えた1,004例で,吸引カテーテルの内径がADAPTの転帰に及ぼす影響を検討している.閉塞部位はICA:20.5%,M1:42.5%,M2:21.6%,BA:7.4%であった.経静脈的tPAは37%で投与された.発症-そけい部穿刺時間中央値は359分(IQR:233~643)であった.

【結論】

ステントリトリーバー使用は22.1%であった.再開通率(mTICI≧2B)は初回吸引後で49.3%,血管内治療終了時で88.8%であった.症候性頭蓋内出血は4.7%で認められた.90日後mRS:0~2は36.5%であった.
ICAかM1閉塞の患者では,中口径吸引カテーテル(0.064か0.068インチ)は小口径カテーテル(0.060インチ以下)と比較して,初回吸引後の再開率が高く(63.9 vs 51.4%,p=.015),再開通までの時間が短かった(16 vs 20分,p=.001).しかし,中口径と大口径吸引カテーテル(0.071~0.074インチ)との間ではこうした違いはなかった.

【評価】

最近のランダム化研究(ASTER,COMPASS)によって,ADAPTはステントリトリーバーを用いた血栓除去術に対して非劣性であることが示されている(文献2,3).さらに,COMPASS研究ではADAPTの方が再開通までの時間が短く,血栓除去装置関連の費用が低いことが示された(文献3).
また,ADAPTに使用する吸引カテーテルは,内径が大きい方が効果が高いことが示唆され(文献4,5),最近は内径0.088インチ(2.24 mm)のものまで登場している(文献6).

本研究では,著者らの前回の研究と同様に,小口径の吸引カテーテルに比較して中口径の吸引カテーテル使用の方がADAPTによる再開率が高く,再開通までの時間が短いことが示された.しかし,さらに大きな口径のカテーテル(0.071-0.074インチ)を使用したからといって再開率が高くなる訳ではなかった.なお,小口径,中口径,大口径それぞれの手技上の合併症の頻度(6.1,5.2,3.2%),症候性頭蓋内出血の頻度(2.7,5.6,6.4%)に差はなかった.
著者らは,この結果を受けて,ADAPTによる再開通率と再開通までの時間に及ぼす吸引カテーテルの口径拡大の効果は中口径でプラトーに達しているのではないかと類推している.その上で,今後のADAPTの進化は吸引カテーテルの口径拡大ではなく,カテーテルの形状,吸引力,目標血管への到達可能性の向上に向かうであろうとしている.さらに手技的な改善も進めなければならないとし,本論文中では彼らの “railroad” テクニックが紹介されている.

<コメント>
ASTER,COMPASS以来,吸引カテーテルを用いたADAPTが再評価され,また同時に口径の大きい吸引カテーテルの使用が拡がっている.しかし,本研究では中口径(0.064~0.068 inch)と大口径(0.071~0.074 inch)の吸引カテーテルの比較では,初回吸引後の再開通率および再開通までの時間に有意差がなかったことを明らかにしている.確かに大口径吸引カテーテルによるより確実な血栓の保持は,血栓回収成功の重要な因子であるが,また同時に血栓までの到達性も手技の成功に大きく影響している.特にtortuousな血管では,大口径吸引カテーテルの方がaccessibilityが低下することが予想され,その点も今回の結果に影響している可能性がある.本研究は確実な血栓の保持に必要な口径をもち,なおかつ十分なaccessibilityを有する吸引カテーテルの選択において,一助になると期待される.(広島大学脳神経外科 石井大造)

執筆者: 

有田和徳