ARUBA研究対象基準に一致する未破裂AVMに対する侵襲的治療は許容されないのか:13研究1,909例のメタアナリシス

公開日:

2022年7月23日  

最終更新日:

2022年7月24日

Interventional outcomes for patients eligible for entry into the ARUBA clinical trial: a systematic review and meta-analysis

Author:

Snyder MH  et al.

Affiliation:

Departments of Neurological Surgery, University of Virginia Health System, Charlottesville, Virginia, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:34740184]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2021 Nov
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

未破裂の脳動静脈奇形(AVM)に対する内科的治療単独(てんかん,頭痛,その他全身併発症に対する内服など)110例と内科的治療+侵襲的治療116例を比較したRCT(ARUBA)は,研究開始後平均追跡期間33ヵ月時点での中間解析で,内科群の方の優越性が確立したために,新規リクルートが中止となった(文献1,2).しかし,本研究に対しては,様々な角度から批判がなされてきた(文献3,4,5).
本稿はARUBA研究対象基準に適格する(18歳以上,未出血,未治療)AVMに対する侵襲的治療に関する13研究(2013~2019年)1,909例のメタアナリシスである.
一次アウトカムは死亡か症候性脳卒中とした.

【結論】

一次アウトカムは11.2%に生じた(プール解析11%,95%CI:8~13%).AVM閉塞は72.7%(プール解析78%,CI:70~85%),出血は9.9%(プール解析10%,95%CI:7~13%),死亡は3.5%(プール解析2%,CI:1~4%)に生じた.最終追跡時(平均追跡期間62ヵ月)の機能予後不良(mRS≧2)は9.9%であった.
一次アウトカムの年間発生頻度は1.85/100人・年(プール解析2.05,CI:1.31~2.94)で,出血リスクは1.34/100人・年(プール解析1.41,CI:0.83~2.13)であった.

【評価】

一旦破裂したAVMの年間破裂率が4.5%であるのに対して未破裂のAVMの破裂率は2.2%と約半分である(文献6).未破裂のAVMに対する唯一のRCTであるARUBA研究では,侵襲的治療*群に対して内科治療単独群で,一次エンドポイント(死亡か症候性脳卒中)が低いことを明らかにした(文献1,2).この結果は,未破裂のAVMに対する侵襲的治療に対する強い疑いを投げかけることになった.
しかし,このARUBA研究に対しては,様々な角度から批判がなされてきた.特に,患者選択の不均一性,治療目的の標準化の欠如,一次エンドポイント設定の不適切性,エンロール率の低さ,一般的な治療方法との乖離(SMグレードI~IIでの直達手術症例の少なさ,III~IV症例に対する血管内治療または放射線治療のみの症例の多さ),短い経過観察期間,サブグループ解析の不在,解釈・結論の不適当さなどが指摘されてきた(文献3,4,5).
ただし,これまでARUBA研究対象と一致した患者集団(18歳以上,未出血,未治療,SMグレードI~IV)を対象とした侵襲的治療の転帰に関する統計学的な解析はなかった.
本研究は2013年以降に公表されたARUBA研究対象基準に一致した患者を対象とした侵襲的治療に関する13研究1,909例のメタアナリシスである.侵襲的治療の内容は手術(塞栓術のあるなしに関係無く)30%,定位放射線照射(塞栓術のあるなしに関係無く)63%,塞栓術のみ1%,手術+定位放射線照射0.5%である.
この1,909症例のプール解析による一次アウトカム(死亡か症候性脳卒中)の頻度(2.05/100人・年)は,既報のARUBA研究の内科的治療群のそれ(3.39/100人・年)を下回っていた.また,このメタアナリシス群の出血の頻度(1.41/100人・年)も,ARUBA研究の内科的治療群のそれ(2.29/100人・年)を下回っており,過去の未破裂AVMの出血率の報告とほぼ一致していた.さらに,最終追跡時の機能予後不良(mRS≧2)の割合もメタアナリシス群ではARUBA研究の侵襲的治療群より低かった(10 vs 38%).
死亡に関しては,メタアナリシス群の死亡率(0.50/100人・年)は,ARUBA研究の内科的治療群のそれ(0.42/100人・年)と差がなかった.
一方,ARUBA研究群と本メタアナリシス群では,侵襲的治療の手段がかなり異なっており,塞栓術単独治療はメタアナリシス群で圧倒的に少ない(1 vs 26%).このことが,ARUBA研究群でAVM閉塞率が低い結果につながっている可能性がある(44 vs 78%).また,ARUBA研究群でのメタアナリシス群に比較した単独定位放射線照射例におけるAVM閉塞率の低さにも注目する必要性がある(19 vs 69%).ARUBA研究群での短い追跡期間,メタアナリシス群での血管撮影率の低さが関係しているのかも知れないが,ナイダスの拡がりの判定法,照射線量,照射テクニックの違いも反映されている可能性がある.
今回解析の対象とした13研究はいずれもAVMに対して侵襲的治療を行った観察研究であり,出版バイアスを含む種々の不正確さを包含している可能性が高い.しかし,ARUBA研究に対するアンチテーゼがここまで積み上がってくると,やはり再度のRCTによる検証が必要である.現在進行中の唯一のRCT(TOBAS)の研究終了は2035年とされている(文献7).それまでは著者らが述べているように,たとえ未破裂であっても,若い患者,併存疾患の少ない患者,SMグレードI–IIの病変,非エロクエント領域の病変には侵襲的な治療を考慮して良いのかも知れないが,高いレベルのエビデンスはないことは肝に銘じておかなければならない.
一方で,未破裂動脈瘤と同様に,AVMの破裂率にも人種差が報告されており(文献8),今後日本を含めたアジアでのRCTの必要性も認識しておかなければならない.

執筆者: 

有田和徳