機械的血栓回収術単独はtPA投与後機械的血栓回収術に対して非劣性を示さず:ヨーロッパにおけるSWIFT DIRECT試験の408例

公開日:

2022年7月23日  

最終更新日:

2022年7月24日

Thrombectomy alone versus intravenous alteplase plus thrombectomy in patients with stroke: an open-label, blinded-outcome, randomised non-inferiority trial

Author:

Fischer U  et al.

Affiliation:

Department of Neurology, University Institute of Diagnostic and Interventional Neuroradiology, Bern University Hospital, University of Bern, Bern, Switzerland

⇒ PubMedで読む[PMID:35810756]

ジャーナル名:Lancet.
発行年月:2022 Jul
巻数:400(10346)
開始ページ:104

【背景】

急性期脳主幹動脈閉塞に対する機械的血栓回収治療(MT)が普及している.現在は,tPA静注療法に追加して,発症6時間以内にMTを開始することが勧められる(文献1,2).tPA静注をスキップしたMT単独治療がtPA+MTに対して非劣性であるか否かを検討した過去の4つのRCTは結果の一致を見ていない.本研究はヨーロッパとカナダで2017年から約4年間で実施されたRCTである.201例はMT単独,207例はtPA+MTに割り当てられた.tPAには全例アルテプラーゼが,MTには主としてステントリトリーバーが用いられた.一次エンドポイントは発症90日目のmRS≤2,非劣性マージンを-12%とした.

【結論】

一次エンドポイントはMT単独群で114例(57%),tPA+MT群で135例(65%)で到達した.調整後リスク差は-7.3%(95% CI:-16.6~2.1%)で,片側信頼区間の下限値(-15.1%)が事前設定マージンの-12%を下回ったためにMT単独群の非劣性は証明出来なかった.症候性頭蓋内出血はMT単独群で2%,tPA+MT群で3%に認められた(リスク差-1.0%,95% CI:-4.8~2.7%).再開通(TICI:2b50~3)はMT単独群では,tPA+MT群より有意に少なかった(91 vs 96%,リスク差-5.1%,95% CI:-10.2~0.0%,p=.047).

【評価】

世界中で急性期脳主幹動脈閉塞に対する血管内血栓回収治療(MT)が普及しつつある.現在のガイドライン上は,tPA静注療法に追加して,発症6時間以内に機械的血栓回収を開始することが勧められている(文献1,2).Mistryらのメタアナリシスでもブリッジ治療(tPA+MT)がMT単独に比較して良好な結果と相関していることが報告されている(文献3).一方,2016年のGoyalらのメタアナリシスによれば,tPA投与の有無でMTの結果に差はなかった(文献4).
これまで報告されている標準的なtPA+MT治療とMT単独治療を比較した4つのRCTのうち,中国での2つの試験(DIRECT-MTとDEVT)はMT単独治療の非劣性を証明しているが(文献5,6),日本からのSKIP試験とヨーロッパのMR CLEAN-NO IVは非劣性を証明出来てはいない(文献7,8).
本研究では,一次エンドポイントの機能予後良好(mRS≤2すなわち機能的自立)の割合がMT単独群で57%と,tPA+MT群の65%より数値上で低かった.さらに調整後リスク差の片側信頼区間の下限値が事前設定のマージンを下回ったためMTの非劣性を証明出来なかった.再開通率もMT単独群で有意に低かった(91 vs 96%,p=.047).一方,症候性頭蓋内出血の頻度は両群間で差はなかった(2 vs 3%).
著者らはこれらの結果は,MT単独治療はtPA+MT治療に対する非劣性を証明しておらず,適応のある患者に対する経静脈的血栓溶解治療をスキップすることを支持しないと結論している.
本試験結果で注目されるのは,高い再開通率(全症例で93.4%)と機能予後良好(mRS≤2)(全症例で61%)である.これは機械的血栓回収治療に理想的な患者選択が行われたこと,近位側フロー・アレスト・デバイスが頻繁に使用されたこと,研究参加施設の高い管理能力と技術水準によるものと推測されている.また,対象患者はランダム化以前にICA閉塞かM1閉塞と予想された患者であり,M2閉塞と推測された患者は対象から排除されていたことも影響しているものと思われる(実際には血栓回収時には,ICA閉塞29%,M1閉塞66%,M2閉塞5%).
着院からそけい部穿刺までの時間は両群とも約100分以内で,MT単独治療群とtPA+MT治療群ではほとんど差がなかった(中央値75 vs 80分).
本研究が実施されたのは欧州とカナダにおける24時間血栓回収治療が実施可能な48の三次脳卒中センターである.そのような包括的脳卒中センターに搬入された症例でも,やはりtPAを静注後に機械的血栓回収治療を行った方が,再開通率が高く,機能予後良好の割合が高かったことがわかった意義は大きい.
なぜなら,少なくとも日本では,急性期脳主幹動脈閉塞患者が,血栓回収チームが常駐している包括的脳卒中センターに,かつチームの稼働時間帯に搬入されることはむしろ少ないからである.したがって,やはり適応がある患者に対しては,先ずはtPAを静注後に血栓回収チームの呼び出し,あるいは患者搬送を行うというのが,標準的なワークフローになりそうである.
本論文が掲載されたLANCET同一号(400[10346])にはオーストラリア,ニュージーランド、中国,ベトナムなどの25のセンターからのRCTの結果も報告されているが(DIRECT-SAFE試験,文献9),こちらもMT群の非劣性を証明出来てはいない.それを含めれば,MT単独 vs ブリッジ治療に関してはこれまでで6つのRCTが出版されたことになる.6試験のメタアナリシスが待たれるところである.

執筆者: 

有田和徳

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