PLNTY(WHO2021)の術前診断は可能か:24例のレビュー

公開日:

2022年9月20日  

最終更新日:

2022年9月21日

Neuroradiological features of the polymorphous low-grade neuroepithelial tumor of the young: five new cases with a systematic review of the literature

Author:

Kurokawa M  et al.

Affiliation:

Division of Neuroradiology, Department of Radiology, University of Michigan, Ann Arbor, MI, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:35001164]

ジャーナル名:Neuroradiology.
発行年月:2022 Jun
巻数:64(6)
開始ページ:1255

【背景】

Polymorphous low-grade neuroepithelial tumor of the young(PLNTY)はWHO 2021で新たに提唱されたWHOグレード1の良性腫瘍である.ミシガン大学のKurokawa Mらは,病理学的診断が得られた自験の5例と過去の9報告19例を対象として,この腫瘍の画像所見と臨床像をまとめた.患者年齢中央値は15.5歳(5~57),女性は62.5%(15/24).
臨床症状があった15例中,13例86.7%に難治性てんかんが認められ,そのうち6例では,腫瘍の肉眼的全摘出後にてんかん発作が消失した.免疫染色では腫瘍は全例でCD34陽性であった.

【結論】

画像上の特徴は,腫瘍径13±6.2 mm,皮質あるいは皮質下の腫瘍95.8%,側頭葉66.7%,石灰化83.3%,辺縁明瞭72.7%,充実性とのう胞性の成分66.6%,T2高信号50%,非造影60%であった.
側脳室側に向けてテーパリングする白質T2高信号(transmantle様サイン)がある8症例では,同サインのない16症例に比べて,てんかんの病悩期間が有意に長く(中央値24ヵ月 vs. 5ヵ月,p=.042),そのうち3例では組織学的に皮質形成異常が証明された(3/8 vs. 0/16,p=.042).

【評価】

PLNTY(プレンティと呼ばれている)はWHO 2021で新たに提唱された腫瘍概念で,Neuronal and mixed neuronal-glial tumorsの一つで,従来nonspecific forms of DNT,diffuse glioneuronal tumors,long-term epilepsy-associated tumors(LEAT),massively calcified low-grade glioma,pediatric-type oligodendrogliomasなどと呼ばれていた腫瘍の中に同様の組織像を呈するものがある(文献1,2).病理学的には石灰化を有する乏突起膠腫に類似した組織像を含み,腫瘍細胞はCD34に強い陽性を示す.遺伝子的にはBRAF V600E変異かFGFR変異(FGFR2/FGFR3)を示しており,MAPK経路の活性化を介して腫瘍発生につながっていると考えられている(文献2).
CD34は細胞膜を貫通する表面抗原で骨髄・末梢血の造血幹細胞および血管内皮前駆細胞などで発現するが,正常脳皮質では認められない(文献3).脳腫瘍ではgangliogliomasやpleomorphic xanthoastrocytomaなどのglioneuronal腫瘍や皮質形成異常症などで認められている(文献3,4).こうしたことからPLNTYと皮質形成異常症の共存が示唆されている.このシリーズでは,組織学的にその共存が証明されたのは全24例中の3例に過ぎなかったが,白質のT2高信号部分をより詳細に検討すれば,その頻度はより高くなるのかも知れない.
本シリーズのPLNTYの患者には若年女性が多く,けいれんを伴うことが多かった.また,画像上は辺縁明瞭な小さな腫瘍で,側頭葉に多く,石灰化とのう胞成分を有し,造影されない皮質/皮質下の腫瘍であることが多かった.これらの臨床像や画像所見は従来の報告と良く一致している(文献5,6).
一方,過去の報告ではPLNTYのほとんどがT2で辺縁明瞭な腫瘤を示すとされるが(文献5),本シリーズでは,27.3%(6/22)がT2で辺縁不明瞭であった.皮質形成異常症(タイプIIb)でしばしば認められる,辺縁不明瞭な白質T2高信号(transmantle様サイン)は47.1%(8/17)で認められた.
これらの結果から,著者らは,PLNTYの画像上の特徴として次のように要約している.CTでは強い石灰化を有する小腫瘤像を呈する.MRIでは,①辺縁明瞭で,正常脳に囲まれた充実性成分とのう胞性成分からなる腫瘤と,②小のう胞とtransmantle様サインとを伴う辺縁不明瞭な腫瘤の2パターンがある.従来は前者が強調されていたPLNTYの画像所見であるが,PLNTYを見落とさないためには,後者のパターンにも注目することが必要かも知れない.今後の他施設での実証を待ちたい.
GangliogliomaやDNETが含まれるglioneuronal腫瘍は病悩期間の長いてんかんを伴いやすく(文献1),LEAT(long-term epilepsy associated tumor)と呼ばれる.これまでは組織学的な特徴によって診断されてきたが,その鑑別は時として困難である.
現在,国立精神・神経医療研究センターでは,難治性疾患実用化研究事業としてこの低悪性度てんかん原性腫瘍(LEAT)の分子遺伝学的診断ガイドラインに向けたエビデンス創出の研究が進行している(文献8).今後、こうした研究を通してPLNTYと他のLEATとの分子遺伝学的,病理学的,かつ臨床的な異同が明らかになることを期待したい.

<コメント>
PLNTYはCNS腫瘍のWHO分類第5版(2021年)に新規収載された腫瘍の中では比較的頻度が高く、我々は本論文の報告後の約1年間にも複数例経験した。そのような症例の中には、論文内で報告した”transmantle-like sign”(腫瘍から側脳室方向に長く伸びる茎状のT2WI/FLAIR高信号域)よりも短く、腫瘍周囲に限局するT2WI/FLAIR高信号域を有する症例がしばしば認められた。このため、必ずしも茎状に長く伸びない症例も含めると、transmantle-like signは論文内で報告したよりもずっと頻度が高い可能性があると考えている。MRIの所見であるtransmantle-like signに対応する病理所見は、論文内で紹介した症例で観察されたように、腫瘍浸潤,gliosis,および皮質形成異常が混在したものと推察されるが、まだ十分な数の症例で検討できてはいない。今後より多くの症例でtransmantle-like signに対応する病理所見が検討され、その病的意義が解明されることに期待したい。(ミシガン大学放射線科 黒川真理子)

執筆者: 

有田和徳