急性期脳梗塞患者に対するエリスロポエチン投与後のマルチプル・バーホール手術の効果:韓国NIMBUS研究

公開日:

2022年9月20日  

Transdural Revascularization by Multiple Burrhole After Erythropoietin in Stroke Patients With Cerebral Hypoperfusion: A Randomized Controlled Trial

Author:

Hong JM  et al.

Affiliation:

Department of Neurology, School of Medicine, Ajou University, Suwon-si, South Korea

⇒ PubMedで読む[PMID:35579016]

ジャーナル名:Stroke.
発行年月:2022 Sep
巻数:53(9)
開始ページ:2739

【背景】

モヤモヤ病などの慢性進行性脳虚血に対するマルチプル・バーホール手術(MBH)は比較的安全な手技として,その有用性が報告されてはいるが(文献1,2,3),動脈硬化性疾患による急性期脳虚血においては,虚血側脳へのMBHの効果は不十分である.韓国亜洲大学校のチームは,動脈硬化性病変による脳梗塞発症2週間以内で,灌流障害ステージがIIかIII(文献4),経硬膜的な側副血行がない42例を対象に,虚血側脳へのMBH実施前のエリスロポエチン(EPO)投与の効果に関するRCTを行った.21例はMBHのみを受け,21例は33,000単位のEPOを経静脈的に3日間投与された後にMBHを受けた.

【結論】

6ヵ月目の評価では,MBH単独群に比較してEPO+MBH群では,手術側半球当たりの血行再建出現(新生血管の出現あるいは既存動脈の再灌流)の頻度も,1個のバーホール当たりの血流再建出現の頻度も有意に高かった(19側/21側[90.5%] vs 12側/21側[57.1%],p=.014ならびに42個/58個[72.4%] vs 30個/58個[51.7%],p=.001).
治療前に比較して6ヵ月目では,EPO+MBH群では,CT灌流画像のパラメーターのうちCBF,TTP,MTTとも有意に改善した.MBH単独群ではTTP,MTTは有意に改善したが,CBFの有意な改善は得られなかった.

【評価】

エリスロポエチン(EPO)は,赤血球の産生を促進する造血因子の一つであるが,血管新生作用も有している.最近,その高用量投与による血管新生効果が,動物実験あるいは臨床前研究において報告されている(文献5,6,7,8).本研究では,脳灌流障害ステージがIIかIIIの急性期脳梗塞に対するマルチプル・バーホール手術(MBH)の術前に,エリスロポエチン(EPO)を頚静脈投与することによって,血行再建の頻度が高まり,各種灌流パラメーターが改善することを示している.また,性,年齢,併存症,RNF213多型などの多くの因子と術後血行再建出現との関係を解析したところ,多変量解析では,EPO投与だけが調整オッズ比6.41(p=.041)で,血行再建出現と相関した.
なお,患者一人当たりのバーホールの数は示されてはいないが,両群(21例ずつ)ともバーホール総数は58個となっているので,平均2.8個のバーホールを穿った計算になる.また,バーホール手術では,浅側頭動脈を避けて皮膚切開し,バーホール直下の硬膜とくも膜を切開するKawaguchiらによって提唱された手技を採用しているようである(文献9).
本研究では,脳灌流障害を示す急性期脳梗塞に対するEPO投与+MBHの血行再建上の有用性を示したわけであるが,長期的な臨床上のベネフィットについては触れられていない.本NIMBUS研究は2019年末で終了しているが,今後新たなRCTでそのことが明らかになることを期待したい.

執筆者: 

有田和徳