特発性低髄液圧症の原因である特発性髄液漏の3タイプ:部位,年齢,BMI

公開日:

2022年9月20日  

最終更新日:

2022年9月21日

Spontaneous Spinal CSF Leaks Stratified by Age, Body Mass Index, and Spinal Level

Author:

Mamlouk MD  et al.

Affiliation:

Department of Radiology, The Permanente Medical Group, Kaiser Permanente Medical Center, Santa Clara, Santa Clara, California, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:1068]

ジャーナル名:AJNR Am J Neuroradiol.
発行年月:2022 Jul
巻数:43(7)
開始ページ:

【背景】

特発性低髄液圧症(SIH)の原因である特発性髄液漏には3タイプがある(文献1).すなわち硬膜の裂隙(大部分が腹側)(タイプ1),外側向きの髄膜憩室の破裂(タイプ2),髄液-静脈瘻(タイプ3)である.最近,こうした3タイプを確実に描出出来るように,CTミエログラフィー(CTM)に際して,予想されたタイプに即した撮像手技を用いることが提案されている(文献2-4).本稿はこれら3タイプの発生部位と患者の背景因子との関係を求めたものである.対象はサンタ・クララ市カイザー・パーマネンテ医療センターを受診したSIH患者のうち,CTMで髄液漏が認められた65例(平均52.4歳,女性37例,平均BMI:26.0).

【結論】

タイプ1が疑われる症例ではダイナミック腹臥位CTMが,タイプ2あるいは3が疑われる症例では側臥位CTMが行われた.
それぞれの髄液漏タイプと症例数,部位,平均年齢,平均BMIは以下の通り.タイプ1:25例,上部胸椎72%(特にT1-T2:36%),44.5歳,BMI:24.3.タイプ2:4例,全例下位胸椎,44.5歳,BMI:27.5.タイプ3:36例,下位胸椎56%,右側72%,58.8歳,BMI:27.0.
すなわち,タイプ1は,相対に若年,BMI正常の患者に多く,上位胸椎に発生しやすかった.一方,タイプ3は相対に高齢者,BMI高値の患者に多く,下位胸椎に発生しやすかった.

【評価】

本研究の著者らは,SIH患者の髄液漏出部位の検出を以下の手順で行っている.まず,脂肪抑制T2強調像で全脊椎MRIを実施し,脊髄硬膜外の髄液貯留の有無をチェックする.もし,硬膜外の髄液貯留が脊髄腹側にあれば,腹臥位ダイナミックCTM(CTガントリー下での造影剤注入後,直ちにCT撮像)で腹側の硬膜裂隙を探す.もし,髄液貯留が一側に偏っていたら,そちら側を下にした側臥位ダイナミックCTMを行う.硬膜外髄液貯留がなければ,髄液-静脈瘻を証明するために仰臥位CTMを行っている.
実際には,硬膜外髄液貯留のパターンを,MRIで明確に捉えたり,その拡がりのパターンを明確に区別出来ないことも多く,その場合には,本稿の結果が漏出部位の推定に有用かも知れない.例えば,比較的若年でBMIが25を超えていなければ上部胸髄前面の硬膜裂隙を疑うというものである.
本研究では,髄液漏の発生部位は,従来の報告と同様に(文献5),92%(60/65例)と圧倒的に胸椎レベルで多く,頚椎レベルは2例,腰椎レベルは3例に過ぎなかった.特発性髄液漏が胸椎レベルで起こりやすいことについて,著者らは,胸郭によって胸椎の動きが制限されていること,その生理的な後弯によって胸椎椎体後面と硬膜が近接していることを背景因子として挙げているが,具体的な因果関係については言及していない.
一方,タイプ1すなわち胸髄硬膜腹側での裂隙が,比較的やせ形の患者で多いのは,そのような患者では硬膜外脂肪組織も薄いため,タイプ1の原因とされている石灰化した椎間板や骨棘による腹側からの硬膜損傷(文献1,5,6)に対するバリアーが薄いことによるのではないかと考察している.
かたや,タイプ3すなわち髄液-静脈瘻は,BMIの高い患者で起こりがちである.このタイプの患者では,SIH発症以前に特発性の頭蓋内圧亢進症を起こしていることがあり,また,髄液-静脈瘻を治療後に新規に他部位の髄液-静脈瘻を起こすことがある.すなわち,BMIの高い患者では,特発性頭蓋内圧亢進症を起こしやすく,その結果,傍脊椎静脈内のくも膜顆粒が破裂して髄液-静脈瘻が発生,結果としてSIHを来しやすいという機序が考えられている(文献7).
タイプ2すなわち髄膜憩室破裂は,数は少ないが,患者のBMIは高く,タイプ3と同様に,いずれも下部胸椎に発生している.タイプ2はタイプ3(髄液-静脈瘻)と類似したメカニズムが関与している可能性が推測されている.
SIHは患者のQOLを大きく阻害する重篤な病態であり,また,最近の米国からの報告では,その年間発生頻度は3.7/10万人とされており(文献8),決して
稀な疾患ではない.本稿はSIHの原因検索の重要な方法論を提案しており,他の専門施設での追試を待ちたい.

執筆者: 

有田和徳