5ALA蛍光陽性のWHOグレード2のグリオーマはCD34陽性微小血管が豊富で予後が悪い

公開日:

2022年11月21日  

最終更新日:

2022年11月22日

CD34 microvascularity in low-grade glioma: correlation with 5-aminolevulinic acid fluorescence and patient prognosis in a multicenter study at three specialized centers

Author:

Hosmann A  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Medical University of Vienna, Austria

⇒ PubMedで読む[PMID:36115057]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2022 Sep
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

低悪性度グリオーマの中にはアグレッシブで,迅速かつ積極的な治療が必要な腫瘍がある.そのような腫瘍を手術所見で捕捉出来ないか.本稿は術中5ALA蛍光観察下での所見とCD34陽性微小血管増殖との関係,それらの臨床的意義を検討したものである.対象は2008年以降にウィーン大学などの3大学で,5ALA投与下で初回摘出術を受けたIDH変異型グレード2のグリオーマ86例.腫瘍における免疫組織学的なCD34陽性血管は,2名の神経病理医によって半定量化された(スコア0:生理的,1:分岐毛細血管,2:微小血管の集蔟).またCD34陽性血管密度(CD34MVD)は組織形態ソフトウェアを用いて自動定量化された.

【結論】

全症例でのCD34陽性血管半定量化スコアはCD34MVDと強く相関した(p<.001).
手術中の青紫励起光下での観察で,13例(15%)の腫瘍組織に蛍光が観察された.腫瘍の蛍光は腫瘍組織のCD34半定量化スコアならびにCD34MVDと相関した(p=.049と.03).
手術後追跡期間は5.4±2.6年であった.CD34半定量化スコアは,PFS不良(p=.01),MTFS(非悪性化生存)不良(p=.006)と相関したが,OSとは相関しなかった.高いCD34MVD値はPFS不良(p=.01),MTFS不良(p=.008),OS不良(p=.049)と相関した.

【評価】

過去20年間,5ALA投与下での術中蛍光観察は,主として悪性グリオーマの摘出率を上げる目的で普及してきた(文献1,2,3).一方,低悪性度グリオーマでは,その陽性観察率は8~22%と低いが(文献4,5),陽性症例では予後不良なことが報告されている(文献6,7).本研究でも,組織学的にはあくまでもWHOグレード2のIDH変異型グリオーマ86例(astrocytoma 56例,1p19q-codeleted oligodendroglioma 30例)において,15%に認められる術中蛍光陽性腫瘍では患者の予後が不良であることを明らかにした.
CD34陽性血管密度はグリオーマにおける血管新生を反映しており,腫瘍増殖速度と相関していることが知られている(文献8,9).本研究では,術中蛍光陽性がCD34陽性血管密度と相関することを明らかにしており,このことは術中の蛍光陽性がWHOグレード2のグリオーマにおける予後を推定するマーカーとして使用し得ることを改めて示したことになる.
本稿はウィーン大学,ミュンスター大学,UCSFの3施設で初回手術が実施された症例を対象とした後ろ向き研究であるが,今後,他施設の症例で実証されるべき結果である.さらに術中蛍光陽性グレード2グリオーマに対する摘出度の差(超全摘,全摘,亜全摘,部分摘出)が予後にどのように影響するかや補助療法のあり方に関しても前向きの共同研究が行われるべきである.
一方,そのような腫瘍の分子遺伝学的特徴についても明らかにされなければならない.
とりあえずの現実的な対応としては,術前のMRIやPET等による診断がたとえWHOグレード2グリオーマでも、できるだけ5ALA投与下での術中蛍光観察を行い,蛍光陽性であれば,全摘出を目指し,術後は悪性のグリオーマと同様に迅速かつ積極的に補助療法を開始することになろうか.

<コメント>
著者らは2016年版のWHO分類でgrade IIと診断された86例のグリオーマ(すべてIDH変異型)を対象として腫瘍摘出術中の5-アミノレブリン酸(5-ALA)による蛍光の有無と予後との関連性を解析した.結果として手術中に蛍光が認められた部分の腫瘍組織内では半定量評価されたCD34(血管内皮マーカー)陽性率が高く,CD34陽性率は予後マーカーにもなり得たので,二段論法的に術中の5-ALA蛍光の有無で患者の予後を予測できるのではないかとの仮説で結んでいる.本研究の問題点として,retrospective studyである(術後補助療法が一定でない)こと,症例数が十分に多いと言えないこと,5-ALA蛍光の評価は肉眼的なものだけであること等が挙げられている.加えて,86例中の30例は1p19q共欠失が確認された乏突起膠腫で残りが星細胞腫であることにはあまり触れておらず,言うなれば臨床的特徴が異種の腫瘍を混同しての研究である.さらに,対象症例における腫瘍切除率(重要な予後マーカー)について評価法の記載はあるものの,その結果と予後やCD34,5-ALAとの関連についての言及がなく,本来なら5-ALA蛍光が腫瘍の切除率向上に寄与するはずなので疑問が生じる.また,5-ALA蛍光は13例で観察されたとのことだが,術前画像(5例では明確な造影効果あり)との関係も示されていない.そもそも予後の悪い腫瘍が何故蛍光を発することが多いのか(腫瘍細胞の性格のせいか,腫瘍組織内の血管内皮が多いせいか)については検討されていない.
本論文は,既に多くの手術で5-ALA蛍光を活用している本邦の脳神経外科医にとっては納得しやすい仮説を示している.しかし,上述のように問題点も多く,このことが逆に今後更に踏み込んだ研究テーマを考える良い素材を提供しているとも言える.
(藤田医科大学脳神経外科 廣瀬 雄一)

執筆者: 

有田和徳

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