出血発症髄膜腫の臨床像:65症例のシステマティック・レビュー

公開日:

2023年1月18日  

Brain Meningiomas Manifesting as Intracranial Hemorrhage: Comprehensive Systematic Review and Report of the First Case of Hemorrhagic Meningiomatosis

Author:

Halalmeh DR  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Hurley Medical Center, Flint, Michigan, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:36332779]

ジャーナル名:World Neurosurg.
発行年月:2023 Jan
巻数:169
開始ページ:73

【背景】

髄膜腫からの出血は2%前後と稀である(文献1,2).本稿は,出血発症髄膜腫のシステマティック・レビューである.対象は著者ら自験の2例を含む65症例で,女性65%,平均年齢58±14歳.発症時症状は局所神経脱落症状72%,頭痛60%,意識レベル低下/昏睡54%,嘔吐22%であった.発症様式は突然発症57%,緩徐発症43%であった.発症段階では,25%の患者では腫瘍の発見は出来なかった.腫瘍存在部位は円蓋部55%,蝶形骨縁11%,大脳鎌/傍矢状洞部9%であった.54例(83%)は特に誘因なく発症した.誘因が疑われたのは12例のみで,頭部外傷4例,腰麻下帝王切開2例,咳1例などが含まれた.

【結論】

併存疾患には高血圧16%,糖尿病5%,抗凝固剤内服6%が含まれた.出血のタイプは硬膜下血腫が最多で71%,そのうち76%が慢性硬膜下血腫であった.その他,腫瘍実質内/周囲57%,脳実質内22%が続いた.病理亜型はmeningothelialタイプが最多で37%,その他,transitional 14%,fibrous 11%,angiomatous 5%,angioblastic 5%,microcystic 3%などが続いた.91%が摘出手術を受け,3%が保存的に加療された.平均8.1ヵ月の追跡期間で,症状の完全寛解51%,症状改善29%,症状持続11%,死亡14%であった.

【評価】

稀な出血発症髄膜腫に関するレビューである.対象は1991年から2021年に報告された65例であり,CT時代の症例も含まれている.このレビューを読むと,特に出血しやすい髄膜腫の組織型,部位,誘因,背景因子などはなさそうである.
出血発症髄膜腫は,高齢者の髄膜腫で起こりやすいという報告があるが(文献3),本レビューでは患者の平均年齢は58±14歳であり,通常の髄膜腫患者の発症年齢と大差はない(文献4).ただし,脳室内出血を起こす髄膜腫は60歳以下と,比較的若年者に多そうである.本シリーズで出血の誘因として疑われたのは頭部外傷,腰椎麻酔,咳,妊娠などであり,従来の報告と変わりはない.併存疾患としての高血圧16%,糖尿病5%,抗凝固剤内服6%という頻度も,そもそも髄膜腫が高齢者に多い事を考慮すれば,特に多くはなく,明らかな因果関係はなさそうである.
出血のタイプも,従来の報告と同様(文献5,6),硬膜下血腫が最も多く71%を占め,腫瘍実質内/周囲57%が続いている.腫瘍実質の血管が何らかの原因で破綻して腫瘍内出血を生じ,その出血が周囲にあふれ出し,最終的に腫瘍が存在する硬膜下スペースに至ることを考えれば当然の分布と言える.
治療の転帰については,従来の報告と同様に死亡は14%と高く(文献1,2,6),何らかの症状を残す頻度も40%であることを考慮すれば,出血発症髄膜腫の多くは,重篤な病態と捉えられ,緊急手術の対象と考えた方が良い.
本レビューは,特に目新しい発見が提示されているわけではないが,出血を伴う髄膜腫に関する最新の包括的情報を要約しており,脳腫瘍の担当者は一度は目を通しておくべきであろう.

執筆者: 

有田和徳