CT灌流画像における低灌流強度比(HIR)は血栓回収後の脳実質内出血リスクと相関する

公開日:

2023年1月19日  

Hypoperfusion Intensity Ratio Is Correlated With the Risk of Parenchymal Hematoma After Endovascular Stroke Treatment

Author:

Winkelmeier L  et al.

Affiliation:

University Medical Center, Hamburg-Eppendorf, Germany and Stanford University School of Medicine, CA

⇒ PubMedで読む[PMID:36416127]

ジャーナル名:Stroke.
発行年月:2023 Jan
巻数:54(1)
開始ページ:135

【背景】

脳実質内出血は急性期脳主幹動脈閉塞に対する血管内治療(EVT)後の重篤な合併症であり,これを予想することは血管内治療の適応判断や適切な術後管理にとって不可欠である.ハンブルグ-エッペンドルフ大学とスタンフォード大学のチームは,入院時CT灌流画像に基づく低灌流強度比(HIR)のEVT後脳実質内出血予想における意義を検討した.対象は急性期前方循環閉塞に対して血管内治療が実施され,十分な術前術後の画像評価を受けていた624症例.HIRは,Tmax >10秒(重度低灌流)の体積/Tmax>6秒(境界域の低灌流)の体積,として算出した.高いHIRは虚血脳内における重度低灌流域の割合が大きい事を示している.

【結論】

91例(15%)ではEVT後に脳実質内出血があり,533例(85%)ではなかった.脳実質内出血あり群では,なし群に比較して入院時HIRが高かった(中央値0.6 vs 0.4,p <.001).多変量解析では,入院時血糖値(調整オッズ比1.08,p<.001),ASPECTS≦5の広い虚血コア(調整オッズ比2.48,p<.001),高いHIR(0.1ポイント毎の調整オッズ比1.22,p<.001)の3つがEVT後脳実質内出血の独立した予測因子であった.入院時と経過観察時の高いHIRは,発症90日目の機能予後良好(mRS 0~2)と有意に逆相関した(調整オッズ比0.83と0.39).

【評価】

急性期脳主幹動脈閉塞に対する血管内治療(血栓回収)後の脳実質内出血は,長時間にわたる虚血による血液脳関門(BBB)と脳組織のダメージを背景に発生し,機能予後不良と相関する(文献1,2,3,4).
低灌流強度比(HIR)は微小灌流不全を反映し,側副血行,虚血コアサイズ,虚血の進行,虚血性浮腫,機能予後不良と関連することが知られている(文献5,6).このHIRは,米国を中心に広く普及している脳灌流画像解析システムであるRAPIDを用いて自動的に算出される(文献7).日本でもRAPIDの導入が少しずつ進んでいるようである.
本稿では,急性期前方循環閉塞に対する血管内治療後の脳実質内出血の予測におけるHIRの意義を624症例を対象に解析している.その結果,入院時高血糖,広い虚血コアと並んで高いHIRが脳実質内出血の独立した予測因子であった.このことは高いHIRが血流再開通後の出血につながる脳組織脆弱性を反映していることを示している.
興味深いのは,本研究で入院時高血糖も血管内治療後の脳実質内出血の発生と関係していたことである.同様の報告はこれまでにもあるが(文献8,9),その機序については十分に明らかになっていない.著者らは,高血糖による酸化ストレスが虚血に基づくBBBの障害を促進する可能性を考慮している(文献10).他の大規模コホートで検証されるべき事実と思われる.

執筆者: 

有田和徳

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