再発膠芽腫に対する対流強化送達(CED)法によるMDNA55投与の2b相試験:高用量投与でmOSは15ヵ月

公開日:

2023年9月12日  

最終更新日:

2023年9月13日

Targeting the IL4 receptor with MDNA55 in patients with recurrent glioblastoma: Results of a phase IIb trial

Author:

Sampson JH  et al.

Affiliation:

Duke University Medical Center, Department of Neurosurgery, Durham, North Carolina, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:36640127]

ジャーナル名:Neuro Oncol.
発行年月:2023 Jun
巻数:25(6)
開始ページ:1085

【背景】

再発膠芽腫は極めて予後不良の病態である.
膠芽腫細胞および腫瘍微小環境内の免疫細胞にはインターロイキン-4受容体(IL4-R)が過剰発現しており,T細胞の増殖を阻害している.
循環置換されたIL4に改変緑膿菌外毒素(PE)を結合させたMDNA55は,IL4-Rに結合して強い抗腫瘍効果を発揮することが期待される.本研究は,定位的に再発膠芽腫組織内に挿入された1-4本のカテーテルを通じた対流強化送達(CED)法によるMDNA55投与のワンアーム2b相試験である.対象は再発したIDHワイルドの原発性(de novo)膠芽腫で再切除が不可能な47例(年齢中央値56歳,男性64%).

【結論】

MDNA55は18-240 μgが1回投与された.注入時間は中央値27時間.治療手技に関連した有害事象はけいれん(21%),倦怠感(19%),頭痛(17%)などであった.
判定可能な44例におけるOS中央値は11.64ヵ月であった(80%片側CI:8.62-15.02).12ヵ月までのOSは46%であった.
組織学的なIL4-R発現程度が高い腫瘍の患者でOS中央値は長い傾向にあったが有意差はなかった.高用量(>180 μg)投与の32例ではOS中央値が15ヵ月と長く,12ヵ月までのOSは55%であった.mRANO基準では腫瘍コントロールは81%で認められた.

【評価】

再発膠芽腫に対する従来の治療によるOS中央値は概ね6-9ヵ月で,12ヵ月までのOSは35%以下,12ヵ月までのPFSは2-10%と低い(文献1-5).
本研究はワンアーム観察研究で,定位的に再発腫瘍内に挿入されカテーテルを通したCED法によるMDNA55の1回投与が生存に及ぼす影響を解析したものである.研究は米国8施設とポーランド1施設で実施された.
その結果,MDNA55が投与された患者全体のOS中央値は11.6ヵ月,高用量(>180 μg)投与症例ではOS中央値15ヵ月,12ヵ月までのOSは46%,12ヵ月までのPFSは27%であった.すなわち,従来の治療に比較して,MDNA55のCED法による投与はOS中央値で50%弱の延長,12ヵ月PFSでは約100%の増加をもたらしたことになる.
また,この効果は腫瘍組織のIL4-R発現程度とは無関係であった.
なお,初発あるいは再発膠芽腫の予後不良因子として知られるMGMTプロモーターの非メチル化(文献5)を示す腫瘍は,本シリーズでは54%を占めていたが,メチル化腫瘍群と比較した非メチル化腫瘍群のOS中央値に差はなかった(非メチル化群10.20 vs メチル化群11.64ヵ月,p =.632).
注意すべきは,MDNA55注入後の偽性進行(pseudoprogression)が約半数(48.8%)で認められた事で,このような症例でも,その後の腫瘍コントロールが良好なものは多かった.
本稿は過去の報告(外部対照)との数値上の比較によって有効性を示唆した形になっている.著者らは既に学会レベルでは傾向スコアマッチング解析の結果を報告しており,これによれば,MDNA55投与群では外部対照に比較して患者死亡の可能性が低かった(ハザード比0.63,95% CI:0.39-1.02)(文献6).
以上の結果は,CED法によるMDNA55投与の臨床実用への発展を期待させるものである.今後行われるであろう第3相試験の結果を待ちたい.また,留置カテーテル(文献7)による複数回のMDNA55注入の効果も知りたいところである.

執筆者: 

有田和徳