鞍結節髄膜腫に対する過去30年間の手術療法の変遷:北米中心の40センターの947例

公開日:

2023年11月7日  

最終更新日:

2023年11月6日

International Tuberculum Sellae Meningioma Study: Surgical Outcomes and Management Trends

Author:

Magill ST  et al.

Affiliation:

Department of Neurological Surgery, Northwestern University, Chicago, IL, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:37389475]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2023 Jun
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

近年,鞍結節髄膜腫に対し従来の開頭手術(TCA)に代わって拡大経鼻経蝶形骨法(EEA)が導入されつつあり,その有用性が報告されている(文献1,2,3).では実際の医療現場ではどうなっているのか.本稿は北米中心の40センターが参加した鞍結節髄膜腫の国際共同研究である.対象は1993-2019年に摘出術が行われた947例(年齢中央値54歳,WHOグレード1が93%).TCAは629例,EEAは318例で実施された.腫瘍径中央値は2.3 cm,TCA症例では2.5 cm,EEA症例では2.1 cmであった.EEAは2006年以前の87例中では4例のみで,その後漸増し2019年ではTCAと同数となった.

【結論】

全摘出率は,TCA,EEAとも約70%で,腫瘍径,術前視野障害と逆相関した(ともにp <.01).視機能障害がある症例での術後視機能の改善はEEAで73.0%,TCAで57.1%であった(p <.0001).多変量解析では,TCAとWHOグレード2-3は術後視機能悪化と相関し,全摘出は術後視機能温存と相関した.死亡率は0.5%,合併症率は23.9%で,新規の一側あるいは両側失明率は3.3%と0.4%であった.髄液漏はEEAで有意に多かった(17.3 vs 2.2%).追跡期間中央値26ヵ月で再発率は10.9%であり,長い追跡期間とWHOグレード2-3は高い再発リスク,全摘出は低い再発リスクと相関した.

【評価】

本研究は,過去30年間の鞍結節髄膜腫の手術方法の変遷,合併症,視機能の予後,再発率などの臨床像を,北米とイタリアの40センターから過去最大の947例を塊集して解析したものである.その結果,EEAは過去20年間で徐々に増加し,最近ではTCAとほぼ同数となっている.また,EEAは視機能改善率が高いことを明らかにしている.
しかし,TCA症例とEEA症例では腫瘍径(2.5 vs 2.1 cm,p <.0001),腫瘍周囲浮腫の頻度(18.1 vs 10.4%,p <.01),術前視野障害の頻度(88.0 vs 77.4%,p <.0001),追跡期間(28 vs 22ヵ月,p <.0001)が異なっており,単純な比較は禁物である.
本稿と併せて発表された傾向スコアマッチング解析の結果を読まなければならない(文献4).
いずれにしても,EEA後の髄液漏の頻度は最近の10年間でも10-20%とあまり低下が認められないことには注目すべきで,今後,大幅な改善が望まれる.

執筆者: 

有田和徳