膠芽腫の遺伝子背景と予後は皮質病変と傍脳室病変で異なる

公開日:

2023年11月27日  

最終更新日:

2023年11月27日

Alterations in EGFR and PDGFRA are associated with the localization of contrast-enhancing lesions in glioblastoma

Author:

Makino R  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Graduate School of Medical and Dental Sciences, Kagoshima University, Kagoshima, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:37744696]

ジャーナル名:Neurooncol Adv.
発行年月:2023 Sep
巻数:5(1)
開始ページ:vdad110

【背景】

膠芽腫造影病変の局在は,脳室下帯(SVZ)あるいは皮質(Ctx)に接するか否かで4群に分けられる(文献1).しかし,各群ごとの分子学的特徴は不明である.本稿は,遺伝子パネルを用いて膠芽腫造影病変の局在と分子学的特徴の関係を後方視的に検討したものである.対象はテント上造影病変を伴うIDH野生型膠芽腫124例.次世代シーケンスを用いてドライバー遺伝子48種における変異およびコピー数変化を解析した.局在はI 群(SVZ+,Ctx+)53例,II群(SVZ+,Ctx-)33例,III群(SVZ-,Ctx+)33例,IV群(SVZ-,Ctx-)5例.

【結論】

SVZ群(I+II)は非SVZ群(III+IV)に比べ術前KPS,切除率,OSが不良であったが,両群間に分子学的相違はみられなかった.
SVZのみに接するII群とSVZに接しないIII+IV群を比較すると,II群ではEGFR変化(増幅もしくは変異)が少なく(12.1 vs. 36.8%,p =.027),CDK4増幅が多く(33.3 vs. 13.2%,p =.051),OSが不良であった(441 vs. 897日,p =.002).皮質にのみ接するIII群と皮質に接しないII+IV群を比較すると,III群ではEGFR変化(39.4 vs. 13.2%,p =.015)やPTEN欠失(66.7 vs. 34.2%,p =.009)が多く,OSは良好であった(901 vs. 473日,p <.001).
一方,多発造影病変は孤発造影病変に比べてPDGFRA変化が多く(43.2 vs. 25.3%,p =.036),RB1変化が少なかった(27.0 vs. 48.3%,p =.031).

【評価】

これまで,脳室下帯(SVZ)に存在する神経幹細胞は膠芽腫の発生と進展に強く関わっていることが示唆されてきた(文献2,3).
また,膠芽腫のうちSVZに接触するものは多発性であることが多く(文献4),生命予後が不良であることが報告されてきた(文献5,6).しかし,従来の報告ではSVZ群(I+II)と非SVZ群(III+IV)間に明確な分子学的背景の相違は認められていない(文献7).このことは,本研究シリーズでも同様で,SVZ群(I+II)は非SVZ群(III+IV)に比べ術前KPS,切除率,OSが不良であったが,両群間に分子学的相違はみられなかった.
著者らは,I群はSVZのみに接する腫瘍(II群)と皮質限局病変が傍側脳室(SVZ)に進展したものを含むヘテロな集団と考え,このI群を除いて,SVZのみに接するII群とSVZに接しないIII+IV群を比較した.同様の考え方で皮質にのみ接するIII群と皮質に接しないII+IV群を比較した.
この結果,膠芽腫のうちSVZのみに接する腫瘍ではCDK4増幅が,皮質のみに接する腫瘍ではEGFR変化やPTEN欠失が多いという結果が得られた.なお,多発造影病変はPDGFRA変化が多かった.
本研究では腫瘍局在と分子学的特徴の相関の検討以外に,受容体型チロシンキナーゼ(RTK)であるEGFRとPDGFRAの変化と臨床像との関係の解析も行っている.その結果,EGFR変化群はKi-67が低く予後良好であること,PDGFRA変化群はKi-67が高く予後不良であることが明らかになっている.つまり,RTKの変化が腫瘍の局在,多発性,腫瘍増殖能,予後等に影響する可能性があり,今後の他施設での検証に期待したい.
本研究では術前MRIにおける腫瘍の局在分類をもとに解析が行われているが,実際に採取・解析された腫瘍がMRI上のどの部位に相当するのかが,定位脳生検の症例以外では不明である点は重大なlimitationである.また,安全性の観点からSVZを含んだ傍脳室病変の採取が忌避されることによる選択バイアスの危惧も大きい.Neuronavigationを利用して検体採取箇所のデータベースを作成することなどが今後の検証には不可欠と思われる.

執筆者: 

牧野隆太郎