免疫染色でのパンサイトケラチン陽性は頭蓋底脊索腫の手術+陽子線治療後の再発を予測する:Mayoクリニックの38例

公開日:

2023年12月22日  

最終更新日:

2023年12月23日

Immunohistochemical markers predicting recurrence following resection and radiotherapy in chordoma patients: insights from a multicenter study

Author:

Bon Nieves A  et al.

Affiliation:

Mayo Clinic Neuro-Informatics Laboratory, Mayo Clinic, Rochester, Minnesota, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:37948681]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2023 
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

頭蓋底脊索腫の全摘出は困難で,残存腫瘍に対する陽子線照射も行われているが,再発率は50%に達する(文献1).再発予測因子としては,被膜内摘出,高齢,女性,大きな腫瘍,術前視力障害,MRI上での造影効果,低分化型腫瘍などが挙げられているが(文献2,3),見解の一致を見ない.米国Mayoクリニック3病院の脳外科チームは,2017年以降に摘出+放射線照射を受けた自験の脊索腫38例(平均38歳)を対象に,摘出腫瘍の免疫組織マーカーと再発の関係を検討した.16例が肉眼的全摘出+放射線照射,22例が亜全摘出手術と放射線照射を受けた.36例(94.7%)の放射線照射は陽子線であった.追跡期間は平均2.7年.

【結論】

解析の対象としたマーカーはサイトケラチンA1/A3,EMA,S100蛋白,パン(汎)サイトケラチン,IN1,GATA3,CAM5.2,OSCAR,chondroidであった.
14例(36.8%)に再発が認められた.ロジスティック回帰分析ではパンサイトケラチン陽性は高いオッズで摘出手術+照射後の再発と相関した(OR 14.67,p =.00517).機械学習手法の決定木分析ではパンサイトケラチン陽性腫瘍は78%の確率,75%の精度で再発群に入った.ランダムフォレスト法における最低深度分布解析では,再発予測の最も重要な変数はパンサイトケラチンで,以下サイトケラチンA1/A3とEMAが続いた.

【評価】

脊索腫で特異度が高い免疫組織マーカーとしては,パンサイトケラチン,brachyury,サイトケラチンA1/A3,S100,EMAが知られている.特にbrachyuryは特異度,感度ともに高い(文献4).
サイトケラチン陽性は低分化型の脊索腫との相関が報告されている(文献5).また,サイトケラチンと同様に上皮マーカーであるEMAの過剰発現は前立腺癌などの種々の癌腫において予後不良と相関している.
本稿は,決定木(DT)分析とランダムフォレスト(RF)解析という機械学習の手法を用いて,摘出+放射線照射(大部分が陽子線)後の頭蓋底脊索腫の再発を予測する免疫組織マーカーを解析したものである.その結果,パン(汎)サイトケラチン陽性が再発の最も重要な予測因子であった.パンサイトケラチンは酸性サイトケラチン(サイトケラチン10/12/14/15/16/19)と塩基性ケラチン(サイトケラチン1/3/4/5/6/7/8)を含んでおり,広範囲のサイトケラチンを検出する抗体である.本稿ではパンサイトケラチンのクローンが明記されていないが,日本ではクローンAE1/AE3が用いられることが多い.このパンサイトケラチン(AE1/AE3)はすべての上皮細胞,上皮細胞由来の腫瘍で陽性となることが知られており,非上皮性悪性腫瘍との鑑別に有用とされている.
今後,本研究の結果をより大規模な患者集団で検証する必要性があるが,同時にパンサイトケラチン陽性の脊索腫が再発しやすいことの分子学的メカニズムも明らかにされなければならない.
さらに,既に脊索腫の再発や増殖との強い相関が報告されているKi-67染色性との相互関係や(文献6,7,8),予後推定におけるパンサイトケラチン対Ki-67の優劣も検討する必要性がある.

執筆者: 

有田和徳