末梢性前大脳動瘤には血管内治療か開頭手術か:パリ市内3大学の69例

公開日:

2023年12月25日  

最終更新日:

2023年12月26日

Microsurgery and Endovascular Therapy for Distal Anterior Cerebral Artery Aneurysm: A Multicenter Retrospective Cohort Study

Author:

Metayer T  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, University Hospital of Caen, Caen, France

⇒ PubMedで読む[PMID:37451360]

ジャーナル名:World Neurosurg.
発行年月:2023 Oct
巻数:178
開始ページ:e174

【背景】

A2より末梢の末梢性前大脳動脈瘤は全脳動脈瘤の4%を占める(文献1).この部位の動脈瘤は,脳主幹動脈の末梢に存在すること,母動脈が細いこと,動脈瘤が小さいこと,動脈瘤頚が母動脈と一体化していることが多いことなど,特有の問題を有している.パリ市内の3脳外科センターのチームは,2015年以降に治療した末梢性前大脳動脈瘤を後方視的に解析して,その臨床像を明らかにした.
対象は69例(平均56歳,女性72%)で,45%が破裂動脈瘤,発生部位はA2末梢:37.6%,A3:60.9%,A4:1.5%であった.動脈瘤径は平均4.8 mm.53例(76.8%)が血管内治療を,16例が開頭手術を受けた.

【結論】

平均ネック径は血管内治療群で3.1 mm,開頭手術群で2.4 mm(p =.03),平均ASPECT比は血管内治療群で1.51,開頭手術群で2.09であった(p =.016).血管内治療の方法はコイル単独59%,フローダイバーター25%,ステントアシスト・コイル17%であった.
治療関連死亡は血管内治療群で1例(コイル穿通による未破裂瘤の破裂),治療関連脳梗塞は開頭手術群で1例(一側下肢麻痺)生じた.
治療直後のRRスコア1は両群とも約85%で差はなかった.平均経過観察期間50ヵ月で,両群とも動脈瘤破裂は認められなかった.
再治療率は血管内治療群で高かった(15 vs 0%,p =.18).

【評価】

本研究が実施されたカーン大学,ルーアン大学,ロスチャイルド病院はパリ市内の3次脳神経外科センターで,3施設を合わせた脳動脈瘤の治療数は年間約500例である.本稿によれば,この3施設での末梢性前大脳動脈に対する治療の76.8%が血管内治療で行われていた.しかし,治療方針には各施設毎に大きな違いがあり,カーン大学では開頭クリッピングファースト,ロスチャイルド病院では血管内治療ファースト,ルーアン大学ではケースに応じて治療法が選択されていたようである.
本シリーズの6割を占めるA3-A4部の動脈瘤のうち,約半数は脳梁膝部あるいは脳梁上面にあるので脳表に近く,開頭によるアプローチにあまり苦労はないように思う.また,著者らも言うように末梢性前大脳動脈瘤は一般に小型で,母動脈が細く,頚部-母動脈が一体化していることが多く(文献2,3),血管内治療には不向きなものも多い.そのような事実を考慮すれば,末梢性前大脳動脈瘤に対しては未だ開頭クリッピングの出番は多そうである.しかし,血管内治療も,リモデリング・バルーン,ステントアシスト,フローダイバーターと進歩が著しいので(文献4,5),脳動脈瘤に対する血管内治療が普及しているヨーロッパの先進施設で76.8%が血管内治療を受けていたという事実は驚きではない.ただし,コイル穿通による未破裂瘤の破裂・死亡という事例を見ると,やはり丁寧な説明と慎重な手術操作は不可欠であろう.
今後,より大規模な患者集団を対象とした前向き研究で,それぞれの治療法の利点・欠点が明確になることを期待したい.

執筆者: 

有田和徳