難治性てんかんを伴う限局性皮質異形成(FCD)タイプIIに対する非侵襲的評価に基づく病巣摘出術の効果

公開日:

2023年12月25日  

最終更新日:

2023年12月28日

Localized focal cortical dysplasia type II: seizure freedom with lesionectomy guided by MRI and FDG-PET

Author:

Usui N  et al.

Affiliation:

National Epilepsy Center, NHO Shizuoka Institute of Epilepsy and Neurological Disorders, Shizuoka, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:37948689]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2023 Nov
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

限局性皮質異形成(FCD)は難治性てんかんの重要な原因の1つであるが,FCDタイプIIのMRI所見は不明瞭なことも多く病変の描出は必ずしも容易ではない(文献1,2).このため,てんかん原生病変の描出にはPET,SPECT,頭蓋内電極脳波検査が必要になることも多い.静岡てんかんセンターのチームはできるだけ侵襲的な手法(頭蓋内電極など)を用いずに,thinスライス3T-MRI,FDG-PET,発作時SPECTを組み合わせて,FCD病変の正確な描出を行い,それに基づいて病変を完全摘出するという治療戦略を採用してきた.本稿は局在性のFCDタイプII51例に対する同治療戦略の有効性の検討である.

【結論】

各検査での病変検出率は,MRI90%,FDG-PET92%,発作時SPECT88%であった.頭蓋内電極脳波は13例(25.4%),術中皮質脳波は8例(15.7%)で使用した.手術後の追跡期間は最低1年で平均3年.
最終追跡時のエンゲル・クラスIは92%,Iaは88%であった.エロクエント領域近傍FCDの15例でも87%がクラスIであった.
クラスIの予測因子はMRI陽性部分の完全切除(p =.006),前頭葉病変(p =.012)であった.術後に神経症状が出現した4例はすべてエロクエント領域近傍FCDであった.MRI病変が陰性で頭蓋内電極を使用した5例でも全例がクラスIであった.

【評価】

限局性皮質異形成(FCD)は3亜型に分けられる.皮質神経細胞の配列の乱れ(皮質構築異常)はあるが,異型細胞(dysmorphic neuron)を認めないのがtype I.Dysmorphic neuronが認められるのがタイプIIで,そのうちballoon cellがないものがIIa,あるものがIIbである(文献3).さらに,病因論的におそらく異なる他の病変(海馬硬化,腫瘍,血管奇形など)を伴うものをタイプIIIとしている.FCDは,難治性てんかんの重要な原因の1つであるが,摘出術後のてんかんコントロールに寄与する因子は十分に判っていない(文献4).
従来,FCDに伴うてんかん原性の除去を目的とする手術においては頭蓋内電極脳波検査が多用されてきたが,これは侵襲的な検査であり,出血,梗塞,感染,患者の行動制限などの不利益も大きい.本稿の著者らの治療戦略は,この侵襲的検査を出来るだけ避けて,thinスライス3T-MRI,FDG-PET,発作時SPECTという非侵襲的な手法を駆使して病変検出に努め,その結果に基づいて病変の全摘出を行うというものであった.実際には頭蓋内電極脳波検査を行ったのはMRI陰性の5例,MRIで不明瞭の4例,エロクエント領域近傍病変の4例(機能マッピング目的)を含む13例(25.4%)であった.従来の報告ではFCDタイプIIの術後発作消失率(エンゲル・クラスI)は61–92%とされているので,著者らの非侵襲的術前検査に基づく手術の結果(エンゲル・クラスIは92%)は,最も良好な報告と一致する.
この良好な結果に寄与する因子の1つとして,著者らはMRIでの病変検出率が90%と,従来の報告の中でも高い方に属する事を挙げている.3-TMRIを用いた0.9 mm厚での3方向MPRAGEと3方向FLAIR画像を経験豊富な読影者が読影したことが有用だったということになろうか.また,こうして得られた高精細MRIとFDG-PETの融合画像は,特にMRI陰性例や脳溝底部異形成(BOSD)のような限局性病変の場合には特に有効であったという.実際,著者らは全例でFDG-PET検査を行っている.本シリーズではFDG-PET陰性(nonlocalizing)の症例が8%(4/51)あったが,PET検査のタイミングと臨床的あるいは非臨床的な発作が重なっていたのかも知れない.一方,SISCOM(subtraction ictal SPECT coregistered to MRI)を用いた発作時SPECT検査は42例で施行されており,そのうち37例で発作起始領域が検出されている.
既に,難治性てんかんを伴うFCDでは,病変の完全切除が,術後発作消失の良い指標であるという報告があるが(文献5,6),本稿も同様に侵襲的な頭蓋内電極脳波検査を避け,画像所見を重視し病変の全摘出を目指すという,いわば病変指向型手術戦略の有効性を改めて示している.
著者らは,たとえ術中MEPやSEPにおける振幅の減少や覚醒下手術での言語障害が出ても,病変を完全に摘出するまで,手術は止めるべきではないと主張する.そこでやめれば,患者は神経機能とてんかんの消失のチャンスの両者を失うと言うのである.著者らのてんかん発作の根絶に向けた強い信念を窺い知ることが出来る.実際,エロクエント領域近傍FCD4例では術後に下肢の不全麻痺が出現したが,全例が歩けるようになったという.
難治性てんかんを呈するFCDにおけるてんかん原性の術前検索としては,定位的脳波測定(SEEG)や脳磁図(MEG)も使用されているが(文献7,8,9,10),本稿の成績はこうしたモダリティーの有効性を検証する際のゴールド・スタンダードとなるであろう.

<著者コメント>
てんかん外科手術で頭蓋内脳波の適応や切除範囲を決める際には病因を考慮することが重要である.限局性皮質異形成タイプII(FCDII)ではMRI病変が「氷山の一角」と考えられてきたこともあり,多くの症例で頭蓋内脳波が行われ,発作起始域,棘波や高周波振動などの電気生理学的指標に基づいた手術がなされてきた.しかし,一期的な病変切除術が奏功したとする報告が近年は散見される.著者らの限局性のFCDII症例でも病変切除術によりエンゲルclass Iaが88%という良好な発作転帰を得たことから,FCDIIのてんかん原性領域は大半の症例でMRI病変部位に限局していたことになる.MRI病変は「氷山の一角」ではなかったのである.FCDIIの手術では頭蓋内脳波や術中皮質脳波は不要と考える.なお多数例で発作時SPECTにてMRI病変がてんかん原性であることの補完的情報が得られ,これも頭蓋内脳波の省略に寄与した.
FCDII症例でのMRI病変の検出率90%は大変高い数字であり,本稿の重要なポイントである.微細なMRI病変の検出により,頭蓋内脳波を行わずに一期的な病変切除に至り発作が抑制された症例が多い.微細なMRI病変の検出においてFDG-PETとMRIの融合画像は大変有用であり,脳溝底部のFCDの検出にも威力を発揮した.MRIの読影に習熟し微細な所見を捉えることはてんかん外科医にとって必須である.すぐに,MRI陰性,と決めつけないことが大切である.
手術では病変の完全切除が肝要であり,機能野に病変が存在しても同様である.FCDIIの病変自体には機能はない.手術にあたっては,FCDIIは正常皮質より硬く,色調も異なることから病変を同定可能である.機能野以外では脳溝を境界とした脳回切除術がよいが,機能野では,完全な,しかし厳密な病変切除にとどめるべきである.
FCDIIに限らないことであるが,てんかん外科では侵襲的検索以前に非侵襲的術前評価を徹底的に行うことが重要であり,thin sliceの3TMRI,FDG-PETは全例で行う必要がある.発作時SPECTも有用である.特に限局性のFCDIIでは,大半の症例で徹底した非侵襲的検索によって病変が検出され,頭蓋内脳波の必要はなく,病変の完全切除で発作抑制が得られる.てんかん外科医は限局性のFCDIIをもつ症例では発作消失率100%を目指すべきである.(静岡てんかん・神経医療センター 臼井直敬)

執筆者: 

有田和徳

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