頭蓋内の脳室外神経細胞腫(EVN)の臨床像:10報告101例のプール解析

公開日:

2024年1月9日  

最終更新日:

2024年1月9日

Survival outcomes of intracranial extraventricular neurocytomas: a systematic review and individual patient data meta-analysis

Author:

Kweh BTS  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Austin Hospital, Melbourne, Victoria, Australia

⇒ PubMedで読む[PMID:38000064]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2023 Nov
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

脳室外神経細胞腫(EVN)はWHO脳腫瘍の分類第4版(2007年)で登場した腫瘍概念で(文献1),主として大脳内に発生するグレード2の腫瘍である.側脳室の前方を主座とする中枢性神経細胞腫(central neurocytoma)に比較して,アグレッシブであることが報告されているが(文献2),詳細は明らかではない.メルボルン大学脳外科などのチームは,頭蓋内のEVNについての過去の10報告101例(男性53.9%,年齢中央値32歳)のメタアナリシスを行った.95.5%が天幕上で,59.6%がのう胞成分を有した.57.3%が肉眼的全摘出術を受け,51.4%で術後放射線照射が実施されていた.

【結論】

追跡期間は平均43.3ヵ月で,手術後死亡は5.6%,再発は32.6%で認められた.
5年OSは90.4%(95% CI 81.8–99.8%),5年PFSは48.6%(95% CI 34.5–68.8%),PFS中央値は60ヵ月であった.50歳以下の患者ではOSとPFSが有意に良好であった(p =.03とp <.01).女性に比して男性ではOSが良好であった(p =.027).亜全摘出群に比較して,全摘出群はOSが良好であった(p <.01).術後放射線照射群では非照射群に比較してPFSが有意に長かった(p =.05).OSは数値的には照射群で長かったが,有意差はなかった(p =.15).

【評価】

Central neurocytomaは1982年にHassounらにより初めて報告された,若年者のモンロー孔近傍の透明中隔から発生する比較的良性(WHOグレード2)の神経細胞由来の腫瘍で(文献3),腫瘍細胞はシナプトフィジンやNSEに陽性である.その後,稀ながら類似した組織像の腫瘍が脳室外にも発見されるようになり,これらの腫瘍は2007年のWHO脳腫瘍の分類第4版において脳室外神経細胞腫(EVN,WHOグレード2)としてまとめられることになった.EVNはcentral neurocytomaと同様に,シナプトフィジンやNSEに陽性であるが,しばしばGFAP陽性部分を含むことが知られている(文献4).遺伝学的には乏突起膠細胞腫で認められるIDH-1変異は陰性で,FGFR変異(FGFR1-TACC1融合など)を高率に伴うことが報告されている(文献5).
EVNはcentral neurocytomaと同じく神経細胞由来の腫瘍で,同じくWHOグレード2でありながら,よりアグレッシブな経過を示す例が報告されているが,稀少腫瘍の故に,全体像の把握は困難であった.
本稿の著者らは,過去の報告101例のプール・データのメタアナリシスによって,EVNの臨床像を明らかにしようと試みた.
その結果,EVNの5年OSは90.4%であった.この5年OS率はcentral neurocytomaの96.6%(文献6)より低く,同じく脳室腫瘍である非悪性上衣性腫瘍の96.8%,脈絡叢腫瘍の92.8%と比較しても低かった.
また本稿のシリーズでは,EVNの5年PFSは48.6%であるが,やはりcentral neurocytomaのPFS:54-57%よりも不良であった(文献6,7).
こうしたデータを見るとEVNの臨床像はcentral neurocytomaや他の脳室内腫瘍に比べればやはり悪そうである.腫瘍の生物学的な性質を反映している可能性があり,EVNを単純に脳室外に出来たcentral neurocytomaと捉えるべきではないという著者らの主張には,首肯せざるを得ない.
ただし,その差はあまり大きなものではなく,その意味では,同じWHOグレード2のカテゴリーに入っているのは妥当と言えるだろう.
術後照射の意義に関しては,照射群では有意にPFSが長かったが,OSには有意差がなかった.これは症例数が少ないことと追跡期間が短かった事を反映しているのかも知れない.
今後EVNの中で,よりアグレッシブなグループの抽出と,それに対する補助療法の確立が必要である.

執筆者: 

有田和徳