発症後早期の非障害側脳への経頭蓋シータ・バースト連続磁気刺激は脳卒中後上肢麻痺の改善を促進する:59例のRCT

公開日:

2024年1月9日  

最終更新日:

2024年1月10日

Continuous Theta-Burst Stimulation of the Contralesional Primary Motor Cortex for Promotion of Upper Limb Recovery After Stroke: A Randomized Controlled Trial

Author:

Vink JJT  et al.

Affiliation:

Biomedical MR Imaging and Spectroscopy Group, Center for Image Sciences, University Medical Center Utrecht and Utrecht University, the Netherlands

⇒ PubMedで読む[PMID:37345546]

ジャーナル名:Stroke.
発行年月:2023 Aug
巻数:54(8)
開始ページ:1962

【背景】

シーター・バースト刺激法(TBS)は50 Hzの3連発経頭蓋脳磁気刺激を5 Hz(脳波のシータ帯域に相当)で与える方法で,連続的TBS(cTBS)には大脳皮質機能を抑制する効果がある(文献1,2).一方,脳卒中患者では,非障害側(健常側)の脳活動の亢進によって,障害側への半球間抑制が亢進しているが,非障害側脳へのcTBSはこの半球間抑制を低下させることが報告されている(文献3).ユトレヒト大学のチームは,脳卒中発症後3週間以内の急性期上肢麻痺の患者59名(虚血性脳卒中50例,脳内出血9例)を対象に,非障害側一次運動野への40秒間cTBS刺激+1時間のリハビリテーション10日間の効果を検討した.

【結論】

28例はcTBS群に,31例はシャムcTBS群に無作為に割り当てられた.
治療介入前と比較した発症3ヵ月後の上肢機能評価スコアARAT(0点-最高57点)の改善度はcTBS群で有意に高かった(平均差9.6点,95% CI:1.2-17.9,p =.0244).発症3ヵ月後のmRSはcTBS群で良好であった(オッズ比0.2,95% CI:0.1–0.8,p =.0225).cTBS群ではリハビリテーション施設への入院期間は18日間短かった(95% CI:0.0–36.4,p =.0494).

【評価】

従来の反復経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation:rTMS)は,一定の刺激パターンで,脳に磁気刺激を加えることによって,神経活動を促通あるいは抑制するもので,臨床では15-45分の刺激が必要である.
一方TBSは,50 Hzの3連発経頭蓋磁気刺激を5 Hz(脳波のシータ帯域に相当)で与える方法で,間欠的刺激(2秒刺激-8秒刺激なし)により皮質機能の促通効果が得られるintermittent TBS(iTBS)と,連続刺激で皮質機能の抑制効果が得られるcontinuous TBS(cTBS)がある(文献1,2).いずれも効果発現時間は早く,iTBSは190秒,cTBSは40-90秒の刺激時間で効果が得られるので,臨床的な応用範囲が広い.
脳卒中患者では,非障害側の脳活動亢進による障害側脳への半球間抑制が亢進しているが,非障害側脳へのcTBSはこの半球間抑制を低下させることが判ってきた.この非障害側脳へのcTBSは,従来は主として慢性期の脳卒中患者における上肢機能改善の目的で実施されてきたが(文献3),近年,発症2-3ヵ月以内の亜急性期患者へのcTBSによる上肢機能の改善効果が報告されている(文献4,5).ただし,その効果が刺激実施期間を超えて持続するのか,また身体全体の機能やADLに与える影響は十分には明らかになっていなかった.
また過去に報告された脳卒中発生後10週以内の27例を対象としたRCTでは,cTBSの上肢機能改善効果を示すことが出来なかった(文献6).
本研究は脳卒中発症後3週間以内の59例(cTBS28例,シャムcTBS31例)を対象としたRCTである.この結果,非障害側一次運動野への40秒間のcTBS+1時間リハビリテーションの10セッション(2週間)は,介入直後のみならず,発症後3ヵ月目の上肢機能の回復(ARATスコア上昇)を促進し,障害や依存性を減少し(良好なmRSへのシフト),早期退院をもたらす事を明らかにした.加えて,他の上肢運動スコア(FMAなど),ADLスコア(Berthel indexなど),QOLスコア(Stroke Impact Scale)でもcTBS実施群が良好であった.
脳卒中患者を対象とした低頻度TMSによる非障害側脳皮質の抑制は,日本でもNEURO15として,東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学科関連の施設で実施されているが,その中でcTBSも行われているようである(文献7).その成果に期待したい.また今後,低頻度TMSとcTBSとの比較が行われることも望みたい.

執筆者: 

有田和徳