頭蓋内出血後の抗凝固薬の再開あるいは開始を何時にするか:13論文1,399例のレビュー

公開日:

2024年1月9日  

Resuming Anticoagulants in Patients With Intracranial Hemorrhage: A Meta-Analysis and Literature Review

Author:

Naamani KEl  et al.

Affiliation:

Department of Neurological Surgery, Thomas Jefferson University Hospital, Philadelphia, Pennsylvania, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:37459580]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2024 Jan
巻数:94(1)
開始ページ:14

【背景】

経口抗凝固薬服用中の患者が頭蓋内出血を起こして搬送されることは,脳卒中センターでは普通に経験されることである.では,急性期治療が終わった頭蓋内出血患者に対する抗凝固薬の再開(あるいは開始)をいつ行うべきかについては明確な基準はない.ペンシルベニア大学のNaamaniらは,この問題に関する過去の13報告のレビューを行った.全症例での元来の抗凝固薬投与の理由は心房細動(弁膜性あるいは非弁膜性),機械弁,人工弁,リウマチ性心疾患などであった.頭蓋内出血の種類は,脳内出血,脳室内出血,硬膜下出血などであったが,そのうち脳内出血症例は1,399例であった.

【結論】

脳内出血症例について報告された13論文のシリーズ毎の経口抗凝固薬再開(あるいは開始)までの期間は,最短で3日(文献1),最長で117日(ワーファリン,文献1)で,7論文で30日以下,6論文で30日以上であった.脳内出血症例全体における発症から経口抗凝固薬再開(あるいは開始)までの平均期間は31日(95%CI,13.7-48.3日)であった.
DOACに関する論文では,再開(あるいは開始)までの平均値は12日,7日,32日で,いずれも2019年以降の出版であった(文献3,4,5).

【評価】

本レビューによれば,過去の報告では,脳内出血後の経口抗凝固薬再開(あるいは開始)までの平均値は約1ヵ月であるが,95%CIは13.7-48.3日で,最短は3日,最長は117日とばらつきは大きい.また,このレビューで採用した過去の論文は大部分がシングルアームでの後方視研究であるので,エビデンスの質は低い.
第一線の脳卒中担当医にとっては,脳内出血を含む頭蓋内出血後の経口抗凝固薬をいつ再開,あるいは開始するかというのは重大な関心事であるが,これに関する多施設での前向き研究がなされていないのはとても不思議である.
ちなみに日本医科大学のSakamotoらは,急性期脳内出血患者の236例を対象に抗凝固療法の実施状況を後方視的に解析している.このうち47例(20%)が抗凝固療法の適用(33例が心房細動,14例が深部静脈血栓症)と判断された.実際に抗凝固療法を開始するか否か,いつ開始するかは担当医に委ねられていた.47例中41例(87%)で経口抗凝固薬(34例はDOAC)の投与が実施された.開始日の中央値は発症後7日であった.41例のすべてにおいて,血腫の増大や出血性イベントはなかったという.
また,埼玉医科大学のKatoらは非弁膜性心房細動のためDOACが投与されていた急性期脳内出血患者39例を対象にDOACの再開状況を後方視的に解析している.39例中19例(49%)でDOACが再開されていた.再開日の中央値は発症後11日(IQR,5-21日)であった.退院時mRSはDOAC再開群で良好で(中央値3 vs 4,p =.07),再開日が早いほど良好であったという(R2 =.31,p =.013).
こうした報告をみると,少なくともDOACに関する限りは脳内出血発症後2週間以内の早期に開始して良さそうであるが,どこまで待期期間を短縮できるのか,逆にDOACが禁忌となる,あるいは開始を遅らすべきはどのようなグループなのか,今後の大規模前向き研究で明らかにされるべきであろう.

執筆者: 

有田和徳