再発三叉神経痛に対する再手術後の痛み無し(BNIスコアIかIIIa)は術後6年の長期観察でも80.8%と高い

公開日:

2024年2月2日  

最終更新日:

2024年2月6日

Microsurgical posterior fossa re-exploration for recurrent trigeminal neuralgia after previous microvascular decompression: common grounds-scarring, deformation, and the "piston effect"

Author:

Majernik GH  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Hannover Medical School, Hannover, Germany

⇒ PubMedで読む[PMID:37955684]

ジャーナル名:Acta Neurochir (Wien).
発行年月: Dec
巻数:165(12)
開始ページ:3877

【背景】

三叉神経痛に対する神経血管減圧術後の再発は稀ではない(文献1,2).MRIでは多くの場合,動脈性の圧迫は消失しているので,再手術には躊躇することが多い.本稿はハノーファー大学で実施した,三叉神経痛に対する再手術症例の解析である.対象は26例で,初回手術からの期間は平均59ヵ月,再発後の症状持続期間は平均20ヵ月.11例(42.3%)は他院で初回手術が行われていた.再手術前に5例(19.2%)が顔面知覚障害を示した.再発後に4例はガッセル神経節アブレーションを,1例はガンマナイフを受けていた.再手術前MRIでは12例(46.1%)でテフロン肉芽組織,3例(11.5%)で神経血管圧迫が認められた.

【結論】

術中の異常所見は(複数回カウントを含む),くも膜瘢痕組織(84.6%),以前に挿入したテフロン塊を介しての動脈性拍動の三叉神経根への伝搬(57.7%),テフロン肉芽組織(53.8%),静脈性接触(30.8%),上記所見の複合(69.2%)であった.再手術後平均79.5ヵ月(29–184ヵ月)の最終追跡段階で,38.5%が痛みが完全消失(BNIスコアI),42.3%が薬剤内服下で痛みなし(BNIスコアIIIa)であった.
良好な転帰(BNIスコアI-IIIa)の予測因子は,術中のくも膜瘢痕組織の存在であった(p =.037).
再手術後の感覚障害は19.2%に生じた.

【評価】

典型的な三叉神経痛に対する根治的治療が神経血管減圧手術であることは論を俟たない.日本の多施設前向き登録研究は,手術3年後で8割の患者が痛みなしという結果を示している(文献3).しかし残念ながら,手術後に僅かずつではあるが,再発症例が増えてくるのは事実である(文献1,2).その原因は,新規の血管圧迫,くも膜瘢痕化,テフロン線維塊の肉芽化などが報告されている(文献4).これに対しては,ガッセル神経節の経皮的高周波電気凝固やバルーンによる圧迫,ガンマナイフ治療,末梢神経電気刺激などが実施されているが(文献5,6,7,8),その効果は必ずしも高くない.本稿は,三叉神経痛に対する再開頭手術26症例(平均59歳,男女同数)の詳細な解析である.これによれば,三叉神経痛再発に関わっていると想定された術中所見は,くも膜瘢痕組織,初回手術で挿入したテフロン塊を介しての動脈性拍動の三叉神経への伝搬(piston effect),テフロン肉芽組織,静脈性接触,これらの複合であった.
実際の手術では,こうした“再発の原因”に対して,瘢痕化したくも膜組織を除去し,テフロン線維塊を除去して,三叉神経根の変形を正した.このような再手術による効果は高く,術後80ヵ月でも80.8%が全く痛み無しか薬剤服用下での痛み無しであった.
優れた治療成績と思われる.しかし現在,日本の大部分の施設では,初回神経減圧手術で,三叉神経根と圧迫血管の間に異物(プロテーゼ)を挿入することはなく,圧迫血管を大きく移動させて,小脳天幕か錐体硬膜に固定するので(文献3),テフロン肉芽組織やそれによるpiston effectが再発の原因となるケースは少ないはずである.そのようなnon-contact減圧手術が行われた症例では,くも膜瘢痕組織か静脈性接触,あるいは初回手術で見落とされていた別の小動脈による圧迫が再発の原因となり得ることになる.
今後,3T-MRIや造影TOFなどの手法で,くも膜瘢痕組織による三叉神経根の形状の変化(ねじれや扁平化)や三叉神経根周囲の静脈や小動脈の描出が可能になれば(文献9,10),再発三叉神経痛に対する再手術に向けたdecision makingはやりやすくなるであろう.
典型的な三叉神経痛の再発ではあるが,そのような画像による証拠がない場合に,再開頭術で神経根の探索を行うか否かは,痛みが患者のQOLに及ぼす影響,患者の全身状態,そして何よりも術者の技量に大きく依存するように思われる.

<コメント>
再発三叉神経痛に対する再手術の報告である.再手術は初回手術に比べ難易度が高いにもかかわらず,長期フォローでも良好な手術成績が維持されている.
結果の部分で気になった点としては,術直後の痛み評価で患者全員がIIIaであったこと,手術所見と術後の効果予測評価の計算が個別に記載されていないことが挙げられる.Table 4に責任血管や手術所見を追加するだけのはずである.
三叉神経痛の手術では,適切な患者選択が重要であるが,再手術ではなおさらである.良好な手術成績を得るためには,手術の対象を症状と術前検査所見が三叉神経痛として典型的である患者のみで構成することが必要である.三叉神経痛の神経減圧術を受けた患者で術後症状が治らないものの中には,手術適応に問題があった症例が含まれている可能性があり,それをどの程度取捨選択するかで再手術の成績は変わる.さらに,初回手術がどのようなコンセプトと手技で行われたのかも,再手術の成績を左右する重要な要素である.筆者らはprosthesisのinterpositionに問題があると考えているようである.このことは日本の脳神経外科医にとっては常識になっているが,もし再手術患者全員の初回手術が筆者らの施設で行われたのであれば,このような結果と結論にはならなかったであろう.
三叉神経痛に対する神経減圧術後の症状残存に対しての再手術の効果を科学的に解析したいのであれば,先ず初回手術が自院で行われた患者と他院で行われた患者を分離すべきで,その上で二群を比較すべきである.そうすれば筆者が求める結論「interpositionはできるだけ避ける」を証明出来るはずである.(諏訪赤十字病院 後藤哲也)

執筆者: 

有田和徳

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