公開日:
2024年4月1日Establishment and multicenter external validation of a risk prediction model for de novo intracranial aneurysms based on a systematic review and meta-analysis of 19 cohorts
Author:
Tan J et al.Affiliation:
Department of Neurosurgery, First Affiliated Hospital of Chongqing Medical University, Chongqing, Chinaジャーナル名: | J Neurosurg. |
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発行年月: | 2023 Sep |
巻数: | 140(3) |
開始ページ: | 783 |
【背景】
新生動脈瘤(de novo aneurysm)は,最初に発見された動脈瘤から離れた部位に新たに生じた2番目以降の動脈瘤である(文献1).中国・重慶医科大学のTanらは過去に報告された論文を基にメタアナリシスを行い,新生動脈瘤発生のリスク因子を解析した.
開発コホートは19研究に含まれた9,351例で,追跡期間は3.3–18.8年.
検証コホートは重慶医科大学の2つの附属病院で,2010年からの5年間に脳動脈瘤に対する治療が行われた患者のうち,術後0.5,1.5,3.5年,5-10年にDSAによる経過観察が行われた776例(951瘤)で,平均追跡期間は6.2年.
【結論】
開発コホートでは,304例(3.25%)で,追跡開始後2.5–18.5年に新生動脈瘤が発見された.新生動脈瘤発生の有意のリスク因子とリスクスコア(括弧内)は60歳未満(4),女性(5),喫煙歴(2),動脈瘤の家族歴(6),多発動脈瘤(3),中大脳動脈瘤(3)であった.
検証コホートでは,45例(5.80%)で,追跡開始後平均5.25年に新生動脈瘤が発見された.ROC解析では,新生動脈瘤発生リスクスコアの合計が13点以上のとき,感度0.667,特異度0.900,AUC0.804で新生動脈瘤の発生を予測し得た.このモデルは検量線解析,決定曲線分析,K-M生存時間解析の全てで優れた能力を示した.
【評価】
本研究では,過去の19報告に含まれた動脈瘤を有する9,351症例の追跡結果のメタアナリシスを通して,60歳未満,女性,喫煙歴,動脈瘤の家族歴,多発動脈瘤,中大脳動脈瘤が新生動脈瘤発生の予測因子であることを明らかにした.また,各リスク因子にリスクスコアを付与して,トータル・リスクスコア(0-23)で評価したところ,高い精度で新生動脈瘤の発生を予測し得た.ちなみに,検証コホートの症例を,トータル・リスクスコアに基づいて,低リスク群(0–7),中等度リスク群(8–15),高リスク群(16–23)に分けると,追跡最終段階での新生動脈瘤発見の頻度は,それぞれ1.91%,10.48%,28.00%であった.また,当然のことながら,追跡期間が長くなればなるほど新生動脈瘤発生の頻度は高くなるわけであるが(文献2,3,4,5),検証コホートのK-M生存時間解析では,高リスク群では追跡期間4年間で約15%であるのに対して,10年間では約40%となっている.
これらのリスク因子を見ると,過去に報告されている(新生ではない)動脈瘤発生のリスク因子と重なるものが多いが(文献6,7),従来,動脈瘤発生のリスク因子とされている高血圧は本メタアナリシスでは新生動脈瘤のリスク因子ではなかった(p =.26).今後のより詳細な検討が必要である.
既に新生動脈瘤が破裂したという報告は数多い(文献8,9).問題は破裂リスクであるが,本稿では言及されていない.破裂リスクが通常の(新生ではない)未破裂動脈瘤に比較して高いのか,またどのような新生動脈瘤が破裂しやすいのかは臨床上の重要なテーマである.この点に関する大規模な前向き研究が必要である.
執筆者:
有田和徳関連文献
- 1) Graf CJ, et al. Report of a case of cerebral aneurysm in an adult developing apparently de novo. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 27(2): 153-156, 1964
- 2) Tsutsumi K, et al. Risk of aneurysm recurrence in patients with clipped cerebral aneurysms: results of long-term follow-up angiography. Stroke. 32(5): 1191-1194, 2001
- 3) Zali A, et al. De novo aneurysms in long-term follow-up computed tomographic angiography of patients with clipped intracranial aneurysms. World Neurosurg. 82(5):722-725, 2014
- 4) Vourla E, et al. Natural history of de novo aneurysm formation in patients with treated aneurysmatic subarachnoid hemorrhage: a ten-year follow-up. World Neurosurg. 122: e291-e295, 2019
- 5) Bruneau M, et al. Long-term follow-up survey reveals a high yield, up to 30% of patients presenting newly detected aneurysms more than 10 years after ruptured intracranial aneurysms clipping. Neurosurg Rev. 34(4): 485-496, 2011
- 6) Vlak MH, et al. Independent risk factors for intracranial aneurysms and their joint effect: a case-control study. Stroke. 44(4): 984-7, 2013
- 7) Cras TY, et al. Determinants of the Presence and Size of Intracranial Aneurysms in the General Population: The Rotterdam Study. Stroke. 51(7): 2103-2110, 2020
- 8) Kim DH, et al. A clinical analysis of twelve cases of ruptured cerebral de novo aneurysms. Yonsei Med J. 48(1): 30-34, 2007
- 9) Yoneoka Y, et al. Ruptured de novo intracranial aneurysms. Acta Neurochir (Wien). 146(9): 979-981, 2004
参考サマリー
- 1) 一般人口における脳動脈瘤発生の危険因子:ロッテルダム研究から
- 2) ADAMTS遺伝子多型は脳動脈瘤発生リスクか
- 3) 足関節上腕血圧比(ABI)が低い成人では正常者に比較して脳動脈瘤の発生率が9倍高い:フィンランド・トゥルク大学
- 4) 多発脳動脈瘤の危険因子:単発例との違い
- 5) 家族性の未破裂動脈瘤の破裂率:8コホート9,511症例のメタアナリシス
- 6) 未破裂脳動脈瘤治療の費用対効果:質調整生存年(QALY)と増分費用効果比(ICER)を用いた解析
- 7) 出血源不明のくも膜下出血の中には家族性の素因のものがある
- 8) 世界のくも膜下出血の発生率は減少しているが,なぜか日本だけが上昇:75文献のメタ解析から(GBD 2016)