中間径脳動脈閉塞に対する血栓回収は内科治療単独と比べて機能的自立を高める:中国におけるORIENTAL-MeVO試験

公開日:

2026年6月30日  

Endovascular Treatment of Medium-Vessel-Occlusion Strokes

Author:

Hu W  et al.

Affiliation:

Department of Neurology, First Affiliated Hospital of the University of Science and Technology of China, Hefei, Anhui, China

⇒ PubMedで読む[PMID:42127389]

ジャーナル名:N Engl J Med.
発行年月:2026 May
巻数:394(19)
開始ページ:1894

【背景】

頭蓋内大動脈の急性閉塞(LVO)に対する血管内血栓回収術の有用性については繰り返し証明されているが(文献1-3),中間径動脈の急性閉塞(MeVO)に関する過去のRCTは血栓回収の有用性を支持していない(文献4-6).
本稿は,中国の48施設で実施された,オープンラベルRCT(ORIENTAL-MeVO)の結果である.対象は中間径動脈(M2,M3,A1,A2,A3,P1,P2,P3のいずれか)の閉塞を有する中等症から重症(NIHSS ≥6点)の脳梗塞で,発症後24時間以内に来院した成人563例である.年齢中央値は71歳,NIHSS中央値は10(範囲3-36),女性は42.8%で,36.6%が静注血栓溶解療法を受けた.

【結論】

対象の563症例は,内科治療+血栓回収療法(血栓回収群)280例と,内科治療単独(対照群)283例に無作為に割り付けされた.実際の閉塞動脈で多かったのはM2が38.9%,M3が18.5%であった.
主要評価項目である90日後の機能的自立(mRS 0-2)は,血栓回収群で58.6%で,対照群の46.6%と比較して有意に高率であった(調整率比1.24,95% CI 1.07-1.44,p =.004).症候性頭蓋内出血の発生率は血栓回収群4.7%,対照群2.2%で,調整リスク比2.21(95% CI 0.87-5.63)であった.90日死亡率は11.1%と10.2%で2群間に差はなかった.

【評価】

中国の48施設で実施された,この中間径動脈の急性閉塞(MeVO)に対する血栓回収の有用性に関するRCT(ORIENTAL-MeVO)は,内科治療+血栓回収療法は内科治療単独と比較して,機能的自立(mRS 0-2)を有意に改善することを明らかにしている.機能的自立というアウトカムを1例得るための治療必要数(NNT)は8.2であった.また90日後のexcellent outcome(mRS 0-1)は,血栓回収群で対照群より有意に高率であった(48.9% vs 33.2%,調整率比1.47,95% CI 1.20-1.78).
従来報告されているMeVOに対する血栓回収療法に関する3つのRCT,すなわちESCAPE-MeVO,DISTAL,DISCOUNTの中立的または否定的結果と対照的に(文献4-6),ORIENTAL-MeVOが有意な陽性所見を示した理由として,以下の点が挙げられる.
第一に,ORIENTAL-MeVOでは,より症状の重いMeVO患者(NIHSS ≥6)に対象を絞っていた点である.MeVOはLVOより自然予後が良好な症例が多いため,軽症例を多く含めると,内科治療群でもmRS 0-2を達成する割合が高くなり,EVTの上乗せ効果が検出されにくくなる可能性がある.実際,ORIENTAL-MeVOのサブグループ解析では,NIHSS <8の症例では血栓回収療法の明確な利益は示されず,NIHSS ≥8の症例で治療効果がより大きい傾向が示された.
第二に,ORIENTAL-MeVOでは,M3などのより末梢の動脈閉塞が少なく,約4割がM2閉塞であった点である.ORIENTAL-MeVOのサブグループ解析でも,M3閉塞では明確な治療効果は認められていない.一般に,より末梢の閉塞では救済可能な虚血領域が小さく,また血管径が細いため手技関連合併症のリスクが相対的に高くなり,血栓回収療法の利益が相殺されやすいと考えられる.
第三に,ORIENTAL-MeVOでは発症24-72時間後の血管開存率が,血栓回収群82.1%,内科治療単独群46.2%と大きく乖離していた点である.この背景として,ORIENTAL-MeVOでは静注血栓溶解療法の施行率が36.6%と比較的低く,そのため内科治療単独群における再開通率および機能転帰が相対的に低くなり,血栓回収療法の有効性がより明瞭に示された可能性がある.
このように,ORIENTAL-MeVOは,NIHSS ≥6の中等症-重症MeVO患者において,血栓回収療法の有効性を初めてRCTとして明示した試験である.一方,症候性頭蓋内出血は,血栓回収群4.7%,内科治療単独群2.2%で,調整リスク比2.21であり,統計学的に有意な増加とはなっていないが,症例数などの検出力の問題で有意差を十分に検出できなかった可能性は否定できない.
今後は,ESCAPE-MeVO,DISTAL,DISCOUNTなどの陰性RCTとこのORIENTAL-MeVOの結果を統合し,どのMeVO患者が血栓回収療法の真の恩恵を受けるかを明確化する必要がある.
特にNIHSS高値,M2優位の閉塞,虚血コアが小さく救済可能脳が大きい症例では有効性が期待される一方,M3以遠や軽症例では出血リスクを含めた慎重な適応判断が求められる.

執筆者: 

有田和徳