レビュー:クッシング病と先端巨大症に対するパシレオチドによる高血糖

公開日:

2016年9月11日  

最終更新日:

2017年6月9日

Hyperglycemia induced by pasireotide in patients with Cushing's disease or acromegaly.

Author:

Silverstein JM  et al.

Affiliation:

Division of Endocrinology, Metabolism and Lipid Research, Washington University School of Medicine, St Louis, MO, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:27405306]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2016 Oct
巻数:19(5)
開始ページ:536

【背景】

新しいソマトスタチンアナログであるパシレオチドはオクトレオチド耐性先端巨大症やクッシング病への治療効果が期待されている.しかし,その作用機序に起因して,高血糖が高頻度で起こることが知られている.本レビューはパシレオチドによる高血糖関連副作用の頻度とそれに関連する因子についてまとめた.

【結論】

高血糖関連の副作用は,パシレオチド皮下注製剤を用いたクッシング病において,長時間作動型パシレオチドを用いた先端巨大症より,その頻度は高い傾向であった(68.4〜73.0% vs.57.3〜67.0%).高血糖が原因でパシレオチド治療をやめた患者の割合は,先端巨大症患者よりクッシング病患者が多かった(3.4% and 4.0% vs. 5.3% and 6.0%).パシレオチド皮下注製剤を用いた先端巨大症患者では,高血糖関連副作用は40%に生じ,10%で投与を中止した.
疾患特異的な病態,薬の剤形,医師の経験はパシレオチド関連高血糖の発生頻度に関わっているようだ.
投与開始前の空腹時血糖(>100mg/dL),糖尿病,高容量パシレオチド(60mg vs. 40mg),BMI>25 kg/㎡,高脂血症がパシレオチド関連高血糖の予測可能因子である.高血糖はいくつかの抗糖尿病薬(メトフォルミン,DPP-4阻害剤,GLP-1 受容体拮抗剤)で管理可能であり,パシレオチド投与の中止によって可逆的である.

【評価】

ソマトスタチン受容体には5つのサブタイプ(SST1~SST5)が存在している.成長ホルモン産生腺腫(先端巨大症)では,このうちSST2とSST5が発現している.従来用いられてきたソマトスタチンアナログ製剤であるオクトレオチドとランレオチドは,主としてSST2に結合する薬であり,SST5への結合能は弱い.一方,ACTH産生下垂体腺腫(クッシング病)にはほぼSST5のみが発現している.パシレオチドは,SST の 1~3 および 5 に結合する新規のソマトスタチンアナログ製剤であり,オクトレオチドやランレオチドに不応の先端巨大症やクッシング病への効果が期待されている.しかし,本剤が膵のラ島β細胞のSST5にも結合するため, GLP-1, 血糖依存的なインスリン の分泌を抑制する一方、食後グルカゴンの分泌は維持される.このため,高血糖が起こる.高血糖のコントロールを適切に行うことができれば,パシレオチドはオクトレオチドやランレオチド抵抗性の先端巨大症やクッシング病に対する有望な薬剤として普及するものと思われる.

執筆者: 

有田和徳

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