内視鏡下にICGを用いた正常下垂体と下垂体腺腫の識別

Vol.1, No.3, P.12 公開日:

2016年12月19日  

最終更新日:

2020年11月9日

Intraoperative Identification of a Normal Pituitary Gland and an Adenoma Using Near-Infrared Fluorescence Imaging and Low-Dose Indocyanine Green

Author:

Marco JT  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Leiden University Medical Center and Center for Endocrine Tumors Leiden, Leiden, the Netherlands

⇒ PubMedで読む[PMID:29506113]

ジャーナル名:Operative Neurosurg
発行年月:2016 Sep
巻数:12(3)
開始ページ:260

【背景】

手術中に正常下垂体と下垂体腺腫を識別することはきわめて重要である.正確に区別することによって,下垂体機能を温存しつつ,腺腫を全摘出することが可能となるからである.
本稿では内視鏡下経鼻経蝶形骨洞腫瘍摘出術において,ICGを用いて正常下垂体と下垂体腺腫の識別が可能か検討した.

【結論】

対象症例は10例.そのうち,機能性下垂体腺腫が6例.鞍底硬膜露出時,腺腫摘出中,腺腫摘出後にそれぞれICG 5mgを静脈内投与した.ICG投与により正常下垂体は下垂体腺腫より平均1.5倍の螢光コントラスト比が得られた.術中ICG投与によって正常下垂体と下垂体腺腫の識別は可能であった.

【評価】

内視鏡下経鼻手術においてのICGの有用性は2015年に熊本大学脳神経外科の研究グループから報告されている(文献1).本稿では正常下垂体と下垂体腺腫の識別に焦点を合わせて報告された.
正常下垂体と腺腫の識別は難しいこともあり,迅速病理診断などで判断されることが多い.ICGにより識別できるようになれば,腺腫の摘出度と正常下垂体機能の温存に寄与するものと期待される.
本稿においては疑問点もあげられる.①下垂体腺腫の大きさが記載されていない(比較的小さめの腺腫が対象のように見受けられる).大きな下垂体腺腫の場合,薄く引き伸ばされた正常下垂体と腺腫を識別できるのか? ②実際の手術では偽性被膜か正常下垂体か迷うことが多いが,偽性被膜と正常下垂体は識別できるのか? ③機能性腺腫において内分泌学的寛解が得られたかどうかの記載がなく,真の意味で腺腫の全摘出にICGが有効であったのか判断できない.
内視鏡下下垂体手術においてICGは投与量・投与のタイミングなどの手技の問題から,有効例と無効例の検討,内分泌学的治療成績に至るまでさらなる研究が望まれる.今後の発展に期待したい.

執筆者: 

木下康之   

監修者: 

有田和徳

参考サマリー