下垂体腺腫に対する経蝶形骨洞手術中の葉酸受容体近赤外イメージング

公開日:

2017年10月16日  

最終更新日:

2017年10月16日

Folate receptor overexpression can be visualized in real time during pituitary adenoma endoscopic transsphenoidal surgery with near-infrared imaging.

Author:

Lee JYK  et al.

Affiliation:

Departments of Neurosurgery, Pathology, Otorhinolaryngology, Radiology, Endocrinology, and Surgery, Hospital of the University of Pennsylvania

⇒ PubMedで読む[PMID:28841122]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2017 Aug
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

下垂体腺腫,特に非機能性腺腫にはα型葉酸受容体FRαが過剰発現していることが知られている(参考文献1,2).ペンシルベニア大学のLee JYKらは,葉酸類似体と近赤外線吸収色素(ICG)類似体の結合物質であるOTL38を用いて,FRαが過剰発現している下垂体腺腫組織の術中可視化が可能かを検討した.近赤外イメージは785 nmレーザー光照射と800〜835 nmレンジのフィルターで得られた(N=15;機能性腺腫9例,非機能性腺腫6例).

【結論】

患者には手術の2〜4時間前に1時間かけてOTL38(0.025 mg/kg)が点滴投与された.15例全例で腺腫の主要部分は,シグナルノイズ比(SNR)1.9 ± 0.70で描出された.FRα発現が高い腫瘍ではSNRは3.0 ± 0.29と高かった.FRαの過剰発現が確認された非機能性下垂体腺腫の3例では腫瘍の辺縁が100%の感受性と特異性で検出できた.この3例では,主要な部分の摘出後の葉酸受容体イメーングにおける陽性所見は,術中MRIにおける腫瘍残存と一致した.

【評価】

葉酸は,DNA合成,DNA修復や細胞分裂などの多くの生物学的過程に必要とされる必須ビタミンである.正常細胞は,3種類の葉酸受容体α,βとγを比較的少量発現しているが,腫瘍細胞では一般にこれらが過剰発現されている.そのため,これらの受容体は新たな化学療法剤や腫瘍組織イメージングのターゲットとなると考えられている.
本研究では,葉酸類似体+ICG類似体を結合させたOTL38を手術前に注射することによって,下垂体腺腫に高発現している葉酸受容体αと結合させ,近赤外レーザー光で検出しようとするものである.葉酸受容体αの発現は,特に非機能性下垂体腺腫で強いことが知られているので,同腫瘍の術中観察には有用性が期待出来る.同様の葉酸受容体αイメージングの試みは卵巣癌でも行われている(参考文献3).
なお,本研究における実際の手術室での観察はVisionsense社のIridium camera systemを用いて行われている.この内視鏡システムは2本の光路を有しており,可視光イメージの上に近赤外イメージングをリアルタイムで重ねることが可能で,通常の内視鏡画像の上に,葉酸受容体α発現部位が表示されている.

執筆者: 

有田和徳

メールで読みたい方はこちら

メルマガ登録する