下垂体転移に対する寡分割定位放射線治療

Vol.2, No.2, P.6 公開日:

2017年4月7日  

最終更新日:

2020年12月13日

Hypofractionated stereotactic radiosurgery for pituitary metastases.

Author:

Chon H & Cho YH  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Asan Medical Center, University of Ulsan College of Medicine, Seoul, Korea

⇒ PubMedで読む[PMID:28070828]

ジャーナル名:J Neurooncol.
発行年月:2017 Mar
巻数:132(1)
開始ページ:127

【背景】

悪性腫瘍の下垂体転移は生命予後が極めて不良な病態であるが,最近は生存期間の延長が報告されており,定位放射線治療の役割が注目されている.韓国Ulsan大学のChonらは,下垂体転移連続7例に対して寡分割定位放射線照射を実施し,その効果を評価した.

【結論】

全例,尿崩症を呈し,前葉機能障害は4例,視機能障害は3例で認められた.腫瘍辺縁線量31Gyを5分割で照射した.腫瘍は4例で消失し,他の3例で腫瘍の制御が得られた.生存期間中央値は14ヵ月であった.尿崩症と視機能障害は全例で改善し,前葉機能障害は改善しなかった.

【評価】

近年,下垂体転移に対する定位放射線治療の報告は増えている.本報告はサイバーナイフによる定位放射線治療の報告である.本研究で用いた辺縁線量31Gy(prescription dose:80%)はガンマナイフの単回照射18Gyに相当する.7例中3例が,治療後6・9・15 ヵ月で死亡しているが,他の4例はまだ生存しており,平均生存期間は14ヵ月であった.日本の多施設共同研究でも,下垂体転移患者の約6割が定位放射線治療を受けており,12.9ヵ月(中央値)と従来の報告に比べれば生存期間は延びてきている.
本研究の対象7例全例で,診断は特徴的なMRI所見と臨床像ならびに他臓器の癌腫の存在によってなされている.したがって,元来予後良好な腫瘍が紛れ込んでいる可能性は否定できないので,さらに長期の追跡が必要である.
今後,原発腫瘍に対する治療法の発達と定位放射線治療を含んだ下垂体転移に対する治療の進歩によって,予後が極めて不良で緩和治療の対象と考えられていた下垂体転移に対する治療戦略も変化するのではないかと思われる.

執筆者: 

有田和徳

参考サマリー