手術後当日のACTH,cortisolでクッシング病の早期寛解が見分けられるか

公開日:

2017年4月22日  

最終更新日:

2017年4月25日

Normalized early post-operative cortisol and ACTH values predict nonremission after surgery for Cushing's disease.

Author:

Asuzu D and Chittiboina P  et al.

Affiliation:

National Institutes of Health (NIH) Clinical Center, Bethesda, MD

⇒ PubMedで読む[PMID:28323961]

ジャーナル名:J Clin Endocrinol Metab.
発行年月:2017 Mar
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

クッシング病手術直後のACTHとcortisolレベルが術後の早期(10日)と,中期(11ヵ月)の非寛解を予測するか否かを検討した.患者は2003〜2016年にNIHで経蝶形骨洞手術を受けた連続257例.早期寛解は手術後10日までに毎朝(3日までは6時間毎)測定したcortisol値の底値が<5µg/dL以下とした.

【結論】

手術後の早期寛解は86.3%で得られた.早期寛解と判断されなかった32例のうち23例に早期に再手術が施行され,このうち91.3%が早期寛解となった.手術日夕方(6PM),手術日の深夜(0AM),手術翌日早朝(6AM)のcortisol値は術後早期非寛解の有意の予測因子であった.手術日の正午のACTH,cortisolレベルから手術前のCRH試験のCRH投与後のACTH,cortisolレベル平均値を引いた値(NEPV)が,早期ならびに中期の非治癒を予測するかどうかを検討した.NEPV cortisol=-12以上では100%の感度と特異度39%で早期非寛解を予想した.陰性予測率は100%で陽性予測率は18%であった.NEPV cortisol=-12以下と以上では中期非寛解出現に有意差があった(HR=1.1,p=0.023).

【評価】

少し驚かされるのは,対象症例は経鼻でも内視鏡下でもなく,すべて経上口唇下経蝶形骨洞手術施行の症例で,しかも2016年の症例も含まれているので,NIHでは少なくともクッシング病に関しては現在も経鼻手術も内視鏡下手術も導入していないということである. クッシング病は重篤な疾患であるので,治すことが手術の第一義で,高い治癒率が得られるのであれば,少々の痛みや患者の不便などはものの数ではない,術者が慣れた方法でやる,というNIHのOldfieldらのグループの明敏な決心が伝わってくる.手術後,明らかな副腎皮質不全症状が出現するまでは,ハイドロコーチゾンの投与を行わないという点も,日本での多くの施設の慣行とは異なる部分である.

クッシング病では,腫瘍からの分泌される過剰なACTHによって,正常下垂体内のACTH産生細胞はACTH産生分泌が抑制されているので,手術で腫瘍の全摘出が達成されれば,手術直後のACTH,cortisolは正常ではなく低値であるはずであるというのは,広く受け入れられている概念である.NIHでは術後早期寛解の判断を10日間連続測したcortisolの底値<5µg/dLで判定しているが,クッシング病が重篤な疾患であり,初回手術から再手術までの期間が開きすぎると解剖学的な変形のために,再手術による寛解率が低下することを考慮すれば,術後早期非寛解の判断をさらに早期に行いたいというのが,本研究のモチーフである.その結果,手術翌朝(6AM)のcortisolは,早期寛解を正確に予測することがわかった.

また,手術・麻酔のストレスが内因性のCRHを刺激するであろうという仮説の基に,手術直後(正午)のACTH,cortisolレベルから手術前のCRH試験のCRH投与後のACTH,cortisolレベル平均値を引いた値(NEPV;カットオフ:ACTH=-40,cortisol=-12)が,早期ならびに中期の寛解を予測するかどうかを検討したものである.NEPV(cortisol)を用いれば,100%の特異度で手術当日には早期寛解を予測することが出来た.
早期非寛解診断の特異度は低いが,まず早期寛解群を手術日に100%の特異度で判定出来ることが,臨床現場にもたらす意義は大きい.ただし,術前にメトピロン等で長期に副腎皮質機能を抑制している患者では,当然下垂体性のACTH産生が抑制されていないので,術後早期の寛解判定は困難と考えられる.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

西岡宏

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