傍鞍部腫瘍に対する経鼻,経眼窩上ダブル内視鏡手術

Vol.2, No.3, P.11 公開日:

2017年6月2日  

最終更新日:

2020年12月15日

Fully endoscopic combined transsphenoidal and supraorbital keyhole approach for parasellar lesions.

Author:

Nagata Y  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Nagoya university, Nagoya, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:28452613]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2017 Mar
巻数:128(3)
開始ページ:685

【背景】

下垂体腺腫のみならず,傍鞍部腫瘍に対しても拡大経蝶形骨洞手術の利用が進んでいるが,最前方あるいは最外側方に死角が出来ること,また見えたとしても繊細な操作が不可能なweak spotであることがしばしば経験される.
この課題の克服のために,経鼻内視鏡手術に顕微鏡下開頭手術を組み合わせるcombined surgeryが導入されているが,開頭手術という侵襲性は課題として残っていた.
名古屋大学のNagataらは,開頭のルートとして眼窩上部鍵穴開頭を選択し,ここから内視鏡を挿入することによって,傍鞍部腫瘍をより非侵襲,かつ安全に摘出しようという試みを発表している.

【結論】

下垂体腺腫10例と頭蓋咽頭腫の2例にこの手術が実施された.11例が手術前に視機能障害を呈していたが,このうち7例で視機能が改善し,1例で悪化した.術後出血,術後髄液漏,再手術を要した症例はなかった.従来の顕微鏡を用いたcombined surgeryと比較してもその有効性,安全性は劣らなかった.

【評価】

腫瘍とその周囲構造の全貌を手中に収めたいという願望は下垂体外科医なら誰でも有している.Nagataらの手法は,最小の侵襲性でこれを実現しようとするものである.また経鼻チーム,開頭チームともに完全内視鏡下に手術を行うことで,術野がよりシンプルになるので,互いの手術操作への干渉を減らすことが可能と思われる.
腫瘍が側脳室の高さに到達していれば,経側脳室的補助も可能であろう.経鼻,経側脳室,経眼窩上の3つのsmall corridorで巨大な鞍内-鞍上部腫瘍を摘出する日が訪れることを予感させる.

執筆者: 

有田和徳

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