異型下垂体腺腫(atypical pituitary adenoma)の概念はまだ健在

公開日:

2017年6月29日  

Atypical pituitary adenoma: a clinicopathologic case series.

Author:

Rutkowski MJ  et al.

Affiliation:

Departments of Neurological Surgery and Neuropathology, California Center for Pituitary Disorders, University of California, San Francisco, California

⇒ PubMedで読む[PMID:28598278]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2017 Jun
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

UCSFのRutkowskiらは,701例の下垂体腺腫の経験を元に,異型下垂体腺腫の臨床像を検討した.三条件(mitotic index,extensive p53 staining,MIB-1 index ≥ 3%)を満たし,異型下垂体腺腫と診断されたのは36例(5%)であった.

【結論】

異型下垂体腺腫は非異型下垂体腺腫に比較して,若年者が多く(平均年齢37歳 vs. 49 歳, p < 0.001),機能性腺腫に多く(78% vs. 42%, p < 0.001),機能性腺腫においても非機能性腺腫においても腫瘍径が大きかった(p < 0.01).再発までの期間中央値は異型下垂体腺腫で56ヵ月,非異型性機能性下垂体腺腫で129ヵ月,非異型性非機能性下垂体腺腫で204ヵ月であった(p < 0.001).Cox回帰分析では,腫瘍摘出度,海綿静脈洞浸潤,腫瘍径,年齢, 性,機能性を説明変数とした時に異型性は再発の予測因子として残った(p=0.002).

【評価】

WHOの内分泌腫瘍の病理テキスト第3版(2005年)で周知されることになった異型下垂体腺腫(atypical pituitary adenoma)の概念は,2017年6月に公開の第4版では,“term atypical adenoma is not recommended”とされ,代わりにaggressive pituitary adenomaが使用推奨されることになった.しかし,aggressive pituitary adenomaの定義は明確にはされず,こういう腺腫は臨床的にaggressiveになると列挙されるのみとなった.中には画像上の海綿静脈洞への浸潤までがaggressivenessの根拠に含まれており,臨床家からは“病理診断”のテキストとしての不十分性を指摘する声が高い.
Rutkowskiの本研究は,これまでで最大の患者集団であり,再発も含めて検討している点で,意義は大きい.
WHO第4版では,もはや死に体と目されている異型下垂体腺腫であるが,本研究によって,未だに臨床的な意義が失われていないことが明白になった.それどころか,WHO第4版でaggressive adenomaの定義が明確にされてない現状では,臨床家は引き続いて異型下垂体腺腫(WHO第3版)の診断基準を重視せざるを得ないであろう.
なお,ドイツ下垂体腺腫レジストリー登録症例を用いたMiermeisterらの研究では,Mib index ≧ 4%を異型下垂体腺腫の診断基準の1つとして提案している.

執筆者: 

有田和徳

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