FSH産生腺腫による卵巣過剰刺激症候群

公開日:

2017年7月20日  

Ovarian hyperstimulation syndrome due to follicle-stimulating hormone-secreting pituitary adenomas.

Author:

Caretto A  et al.

Affiliation:

Department of Endocrinology and Metabolic Disease, Istituto Scientifico San Raffaele, Università Vita-Salute, Milano, Italy

⇒ PubMedで読む[PMID:28676954]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2017 Jul
巻数:Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

FSH産生腺腫は,腫瘍細胞が免疫染色でFSH陽性であっても特有な内分泌症状を呈することはほとんど無く,そのため一般に 非機能性下垂体腺腫に分類される.本論文では比較的稀なFSH産生下垂体腺腫による卵巣過剰刺激症候群(spontaneous ovarian hyperstimulation syndrome:OHSS)の5例を紹介している.OHSSはFSH高値,LHの抑制,エストロゲン高値,腹部症状,頻発月経,卵巣嚢腫と定義した.

【結論】

12年間に経験した閉経前の女性(18〜50歳)の非機能性下垂体腺腫171例のうち62例(36.6%)が免疫染色でFSH産生腺腫と診断された.OHSSは女性非機能性下垂体腺腫のうち5例(2.9%),女性のFSH産生腺腫では8.1%で認められた.今後,非機能性下垂体腺腫におけるOHSSの病態の認識が広がれば,閉経前の女性非機能性下垂体腺腫の患者において,この病態が発見される頻度は増加するであろう.

【評価】

卵巣過剰刺激症候群は排卵誘発を目的としてhMG,hCGなどのゴナドトロピン製剤を用いて卵巣刺激を行う際に発生する医原性疾患である.OHSSの病態は,卵巣腫大に伴う血管透過性の亢進によるサード・スペースへの血漿成分の移行,すなわち腹水および胸水の貯留と,その結果生じる循環血液量の減少および血液濃縮である.病態が進行すると,尿量の減少を来して腎不全を招き,呼吸・循環不全に陥る(OHSSの発生原因とその管理 - 日本産科婦人科学会, 1998).非医原性のOHSSとしては妊娠中に自然発症するOHSSが報告されている.これはFSH受容体遺伝子の機能亢進変異が考えられている.ゴナドトロピン産生腺腫で血中FSH高値を伴う症例にOHSSが生じる可能性は以前から報告されていたが,本論文の画期的な点は,閉経前女性の非機能性下垂体腺腫での頻度,そして免疫組織学的なゴナドトロピン産生腺腫症例での頻度を明らかにした事である.2.9%は無視出来る頻度ではなく,非機能性下垂体腺腫を有する若年女性では必ずチェックすべき病態といえる.

執筆者: 

有田和徳

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