再発頭蓋咽頭腫に対するビタミンA誘導体トレチノインの増殖抑制効果

公開日:

2017年7月21日  

最終更新日:

2017年7月22日

High FABP5 Versus CRABPII Expression Ratio in Recurrent Craniopharyngiomas: Implications for Future Treatment.

Author:

Li Q  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, West China Hospital of Sichuan University, Chengdu, People’s Republic of China

⇒ PubMedで読む[PMID:27418530]

ジャーナル名:World Neurosurg.
発行年月:2016 Oct
巻数:94
開始ページ:197

【背景】

ビタミンA代謝産物であるレチノイン酸(RA)は,細胞分化,細胞分裂周期の停止,またはアポトーシスを促進する作用を有する.CRABP-II(細胞レチノイン酸結合タンパク質II)とFABP5(脂肪酸結合タンパク質5)はレチノイン酸と結合する蛋白であるが,最近の研究によれば,高いFABP5/CRABP-II比は頭蓋咽頭腫の成長に関与することが示唆され,一方,ビタミンA誘導体のATRA(トレチノイン)は腫瘍成長を抑制することが示唆されている.Li Qらは頭蓋咽頭腫再発例でこの事実を再度検証した(N= 50再発;15例,初発35例).

【結論】

免疫染色,PCR,Western Blotいずれの方法でもFABP5/CRABP-II比は再発群で,初発群より高かった.三世代目培養細胞では,再発例は初発例より増殖速度が早く,ATRAは濃度依存性にアポトーシスを誘導し,腫瘍増殖を妨げた.この実験の結果,ATRAは頭蓋咽頭腫の治療薬候補となり得ることを示唆した.

【評価】

レチノイン酸の生理的な濃度では,FABP5発現が高い細胞では,細胞の増殖能を活性化し,CRABP-IIの活性が高い細胞では細胞のアポトーシスを促進することが知られている.本研究は,頭蓋咽頭腫再発例と初発例を比較して,再発例でFABP5/CRABP-II比が高い事を明らかにした.グリオーマや乳癌など他の悪性腫瘍においても,高いFABP5/CRABP-IIは予後不良と関連している.
オール・トランス・レチノイン酸(ATRA,[トレチノイン])はビタミンA誘導体の一種で急性前骨髄球性白血病(APL)の治療薬として30年以上使用されている.ATRAはAPLの分化誘導により寛解に持ち込むと同時に,APLに合併したDICをコントロールすることが出来る.既にLi QらはATRAが頭蓋咽頭腫細胞の成長を抑制することを報告しているが(文献1),今回は再発腫瘍を用いてATRAが腫瘍細胞の増殖を抑制することを明らかにした.ATRAは長く使用されており,副作用も良くわかっている・脂溶性でありのう胞内にも到達しやすい・薬価が安い・内服も静注も可能などの利点を有しているが,催奇形性などの重篤な副作用もあり,臨床応用までには丁寧で長い手続きが必要と思われる.

執筆者: 

有田和徳

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