下垂体卒中に対する内視鏡下手術:単一施設での75症例

公開日:

2017年8月30日  

最終更新日:

2017年8月30日

Endoscopic endonasal surgery for pituitary apoplexy: evidences from a 75-cases series from a tertiary care center.

Author:

Zoli M.  et al.

Affiliation:

Centre of Pituitary Tumors and Endoscopic Skull Base Surgery Department of Neurosurgery, IRCCS Scienze Neurologiche di Bologna, Bologna, Italy

⇒ PubMedで読む[PMID:28669873]

ジャーナル名:World Neurosurg.
発行年月:2017 Jun
巻数: [Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

1998〜2015年の間に下垂体卒中に対してボローニャ大学で経鼻内視鏡下手術を行った75症例(男:女=47:28)をサマリーして,下垂体卒中の病態,手術成績を明らかにした.経過観察期間は69.3±46.7ヵ月.

【結論】

初診時の症状・徴候は,頭痛(100%),下垂体前葉機能低下症(68%),視機能障害(73.4%),眼球運動障害(50.7%),意識障害(2.6%).下垂体卒中の原因は,虚血と出血がそれぞれ,約5割であった.8割で根治的摘出が可能であった.手術後,髄液漏は1例(1.3%)で生じ,前葉機能の悪化は24%,尿崩症は5.3%で生じた.眼球運動障害は69.2%で改善し,視機能障害は85.5%で改善した.これらの改善は出血群よりも虚血群において,より多く認められた(p 0.043).

【評価】

下垂体卒中は下垂体腺腫の中に壊死(梗塞)か出血,あるいはその両者が同時に起こり,急速な体積増加と起炎物質の放出によって頭痛や視機能障害などの症状が急に発症するものと定義される.これまでも,その治療成績は多数報告されてきたが,本報告は,規模の大きな下垂体センターにおける75例という多数例をまとめたものである.
下垂体卒中の原因は,虚血と出血がそれぞれ,半数ずつであった.出血性梗塞を示す例は,鞍上部に比較的大きな伸展を示すものが多かったという.
Jho等の下垂体卒中のgrading(参考文献1)に基づけば、Grade 1(無症状)およびGrade 2(下垂体機能障害のみ)は0%,Grade 3(頭痛のみ)13%,Grade 4(外眼球運動障害のみ) 13%,Grade 5(視力障害あるいは意識障害)74%であった.
手術による症状改善は,従来の報告と同様に頭痛,外眼球運動障害,視機能障害で良好であり,下垂体機能に関しては不良であった.
対照群を置いた研究ではないので,保存療法と比較した手術療法の優位性が示された訳ではないが,手術療法の効果は高く,合併症も少ない.一方,外眼筋運動に関しては保存的治療でも良好な転帰をたどるとの報告も多く,眼球運動障害のみの症例(Grade 4)の症例をどう扱うべきかについては,今後,多数例で検討されるべきである.
最近,Ogawaら(2016)は,虚血による下垂体卒中では,出血による群に比較して,視機能障害がより強いと報告している(参考文献2).本研究では,先行するSempleらの研究(参考文献3)と同様,虚血群の方が,視機能改善,眼球運動改善の頻度は高かった.この差は,虚血群,出血群の定義の違い,特に出血性梗塞群をどちらの群に入れるかの相違によるものであろうと,本論文の著者等は述べている.

執筆者: 

有田和徳

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