TSS術後髄液漏の予防に蝶形骨洞粘膜の利用が有効

公開日:

2017年10月17日  

最終更新日:

2017年10月17日

Repair and prevention of cerebrospinal fluid leakage in transsphenoidal surgery: a sphenoid sinus mucosa technique.

Author:

Amano K  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Tokyo Women’s Medical University, Tokyo , Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:26338198]

ジャーナル名:Neurosurg Rev.
発行年月:2016 Jan
巻数:39(1)
開始ページ:123

【背景】

経蝶形骨洞手術(TSS)の合併症の中で,髄液漏は比較的頻度が高い合併症の1つである.また,近年の拡大TSSでは術中髄液漏の閉鎖が,手術手技の中で重要な位置をしめている.髄液漏の閉鎖には有茎鼻中隔粘膜弁の作成や,筋膜や脂肪を用いた閉創が一般的に行われている.しかし,このような手技は患者に新たな手術侵襲を加えることになり,必要最小限の症例に対し行うべきと考えられる.Amanoらは1039例のTSS手術症例(蝶形骨粘膜の利用前:前期539例,利用後:後期500例)から,蝶形骨洞粘膜の利用が髄液漏の予防に有効であるか否かを検討した.

【結論】

蝶形骨洞粘膜を利用しはじめた後期500例のうち,有茎弁として利用したのは239例,遊離片として利用したのは82例(うち38例は縫合),両方の利用が24例であった.遊離片はくも膜の裂け目や硬膜の欠損部を補うために用いられた.
病変の積極的な摘出により,術中髄液漏の頻度は後期の症例で優位に増加したが,術後髄液漏の頻度(再手術を要した頻度)は,前期で10/539例(1.86%),後期で6/500例(1.2%)と増加を認めなかった.
蝶形骨洞粘膜を利用したことによる髄膜炎や粘液嚢胞は認めなかった.

【評価】

蝶形骨洞粘膜の利用の最大の利点は手術侵襲性が全く変わらないことである.正常粘膜を温存し術前の蝶形骨洞に近い形に復元することで,TSS自体はさらに低侵襲になったといえる.蝶形骨洞粘膜を利用することで,腹部の皮下脂肪,大腿筋膜,鼻中隔粘膜弁などを採取せずに髄液漏を閉鎖できれば,患者の負担も大きく軽減される.しかし,本稿内で述べられているが,脂肪採取の頻度が低下したのは軽度の術中髄液漏(Grade1 or 2:参考文献1)の症例のみであった.蝶形骨洞粘膜の利用は低侵襲かつ髄液漏防止に有効な手段であるが,拡大TSSなどにおける従来の脂肪充填や鼻中隔粘膜弁に完全に置き換わりうる手技ではないと言える.
本稿では述べられていないが,蝶形骨洞粘膜を温存することで,術後の鼻内環境を改善することにもつながる可能性がある.
鼻中隔粘膜弁を採取した場合は術後の鼻内合併症の頻度が高くなるという報告がある(参考文献2).蝶形骨洞粘膜を温存した場合と切除した場合で,術後の鼻内合併症率,自覚症状などに差が生じるのかさらなる検討を期待する.

執筆者: 

木下康之   

監修者: 

有田和徳

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