頭蓋咽頭腫治療後の成長ホルモン欠損症患者の予後に与えるリスク因子は何か:KIMSデータベースから

公開日:

2017年11月11日  

最終更新日:

2017年11月11日

Relative risks of contributing factors to morbidity and mortality in adults with craniopharyngioma on GH replacement.

Author:

Yuen KCJ  et al.

Affiliation:

Swedish Pituitary Center, Departments of Neuroendocrinology and Neurosurgery, Swedish Neuroscience Institute, Seattle, WA,USA

⇒ PubMedで読む[PMID:29029108]

ジャーナル名:J Clin Endocrinol Metab.
発行年月:2017 Sep
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

頭蓋咽頭腫治療後の成長ホルモン欠損症患者では合併症(morbidity)と死亡率(mortality)が高くなることが知られている.しかし,各リスク因子に関して相対的リスク率は不明である.Swedish Neuroscience Institute(Seattle)のYuenらはKIMS(Pfizer International Metabolic Database)に登録された成長ホルモン補充を受けている頭蓋咽頭腫治療後の患者1,669名を対象にこの点の解明を試みている.

【結論】

対象患者全体では,脳卒中の既往と高脂血症は心血管障害リスクを高め,BMIの上昇と放射線照射の既往は脳血管障害のリスクを高め,胴囲の増加は糖尿病のリスクを高めていた.成人発症症例では小児期発症症例に比較して,腫瘍再発のリスクは3倍高いが,女性であることと放射線照射はそのリスクを低下させた.心・脳血管障害の一般的なリスクファクターは対象患者群においても心・脳血管障害と糖尿病のリスクを高めた.直近のIGF-1値は死亡率と逆相関していた.

【評価】

近年,手術と放射線照射によって,頭蓋咽頭腫の制御率は向上しているが,視床下部-下垂体機能障害はほぼ必発であり,結果として,患者の健康,生命予後は重大な影響を受けている.
KIMS(1997-)はGH補充を受けている成人患者に関する欧州31カ国を中心とした世界最大のデータベースで,頭蓋咽頭腫や下垂体腺腫を含めた脳腫瘍,頭部外傷,脳血管障害,特発性まで含めた全てのGH分泌不全症患者(約1.6万人)の臨床データが前向きに蓄積されてきた.KIMSは5年前で新規データの登録を終了しているが,今後,このデータベースを元に成長ホルモン分泌不全患者の長期予後についての報告がなされるものと思われる.
今回は,頭蓋咽頭腫患者の合併症,死亡についてリスク評価を行ったものである.頭蓋咽頭腫患者においても通常の成人病のリスクファクターは心・脳血管障害と糖尿病のリスクを高め,死亡率を高めた.直近のIGF-1値は死亡率と逆相関していた.健常者と比較した糖尿病の相対リスクは9.26(p=0.001),全体の死亡率も2.23(p=0.001)と高かった.
注目すべきなのは,健常者に比較した新規頭蓋内腫瘍の発生で,対象患者では12例に発生した(悪性神経膠腫5例,髄膜腫4例,詳細不明腫瘍3例).健常者に比較した新たな頭蓋内腫瘍の発生リスクは約3倍で,そのうち悪性腫瘍発生の相対リスクは8倍であった.
成人成長ホルモン欠損症に対する成長ホルモン補充が開始された当時,頭蓋咽頭腫の晩期合併症の多くは解決するという淡い期待もあったが,今回の報告によれば,未だに種々の合併疾患のリスクは高く,死亡率も高いことがわかった.すなわち,下垂体ホルモン補充を充分に行っても,頭蓋咽頭腫の患者では、これらの晩期合併症や早期死亡は防ぎ得ないという重要な事実が示された.一人一人の患者の生活習慣や成人病リスクファクターへの介入が欠かせないという事であるが,頭蓋咽頭腫治療後の患者では,精神的,肉体的,社会的な活動性が落ちているので,なかなか困難な課題である.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

木下康之

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