先端巨大症患者における大腸内視鏡検査の現状:ガイドラインに沿っているのか

公開日:

2017年12月20日  

最終更新日:

2021年1月18日

Guidelines versus real life practice: the case of colonoscopy in acromegaly.

Author:

Parolin M.  et al.

Affiliation:

Department of Medicine (DIMED), Padua University Hospital, Padua, Italy

⇒ PubMedで読む[PMID:28936751]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2017 Sep
巻数:21(1)
開始ページ:16

【背景】

先端巨大症患者は大腸ポリープ・大腸癌の合併症を伴うことが多いとされ,先端巨大症の診断時には大腸内視鏡検査を行うことが勧められている(文献1).しかし,臨床現場で実際にどれぐらいの割合で大腸内視鏡検査が実施されているのか報告はない.
本稿はイタリアからの報告で,146例の先端巨大症患者における大腸内視鏡検査の実施状況を調べ,検査の施行頻度・大腸ポリープと大腸癌の合併頻度を検討した.

【結論】

大腸内視鏡検査を施行した割合は,先端巨大症診断時に25%,フォローアップ中に51%,両方で施行したのは11%であった.少なくとも1度の検査を施行した症例は100例(68%)で,検査を施行しなかったのは患者側の理由(大腸検査に対する不安など)であった.
内視鏡検査では32例(32%)でポリープが見つかった.一方,大腸癌は認められなかった.コントロール群と比較すると先端巨大症患者では過形成性ポリープを合併する頻度が高かった(OR 3.9).
ポリープを合併した症例ではGH値,IGF-1値が高い傾向を認め,特に腺腫性ポリープを合併した症例で顕著であった.

【評価】

本研究の対象患者では3割以上の先端巨大症患者で大腸内視鏡検査が未実施で,ガイドラインで指示されているようには行えていない現状が明らかとなった.
先端巨大症におけるポリープの合併頻度は報告によって異なるが,頻度の違いは全大腸検査が行えたか,また内視鏡医の技量にも影響されると考えられる.本稿では長結腸が13%で認められており,熟練した内視鏡医による検査が必要とも記載されている.同様の結果は岡山大学のグループからも報告され,先端巨大症患者では大腸内視鏡の検査時間が有意に長く,特に高齢者で顕著であったと報告されている(文献2).
先端巨大症患者で大腸ポリープの合併頻度が高いことは,多くの報告で一致しているが,従来,合併頻度が高いとされてきた大腸癌については議論の余地がありそうである.最近,先端巨大症患者に大腸癌が合併する頻度は高くないという報告もあり(文献3),さらに検証していく必要がある.

執筆者: 

木下康之   

監修者: 

有田和徳

参考サマリー