術後髄液漏の頻度を減らすためにはルーチンワークとして鞍底形成が必要か

公開日:

2018年3月21日  

最終更新日:

2018年4月18日

Identification and repair of intraoperative cerebrospinal fluid leaks in endonasal transsphenoidal pituitary surgery: surgical experience in a series of 1002 patients.

Author:

Strickland BA  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Keck School of Medicine of USC, 1200 North State St., Ste. 3300, Los Angeles, CA 90089.

⇒ PubMedで読む[PMID:28960156]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2017 Sep
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

経蝶形骨洞手術(TSS)の合併症の1つである術後髄液漏を予防するために,これまで様々な工夫が報告されてきた.米国Southern California大学のグループは脂肪組織と筋膜を用いたシンプルな鞍底形成の有用性を報告してきたが(文献1),本稿では1,002例という多数例を基に術後髄液漏について後方視的に検討した.

【結論】

拡大経蝶形骨洞手術を除いた1,002例のTSSのうち,術中髄液漏は375例(37.4%)に生じた.術中髄液漏を認めた375例と,髄液漏は認めないが術者の判断によって92例(9.2%)で鞍底形成を行った.それ以外の症例で鞍底形成は行わなかった.鞍底形成は脂肪組織と筋膜を用いた(文献1).
術後髄液漏は26例(2.6%)に生じ,13/26例は術中に髄液漏を認めなかった症例であった.また,術中髄液漏を認めないが鞍底形成を行った92例では,術後髄液漏は認めなかった.

【評価】

本稿で強調されている点は,術後に髄液漏が生じた症例の半数は術中髄液漏を認めなかった(鞍底形成なし)という事実と,術中に髄液漏は認めないが鞍底形成を行った症例では術後に髄液漏を生じなかったという事実である.そこで,大きな腫瘍や薄いクモ膜が鞍内に陥入してくるような症例では術中髄液漏がなくても鞍底形成を行う方がよいとしている.
術中髄液漏を認めなくても,鞍底形成を行うことには賛同するが,鞍底形成の方法としては検討の余地があると考えられる.筆者らの鞍底形成の方法は,文献1によるとトルコ鞍から蝶形骨洞内まで脂肪組織(あるいは筋膜の組み合わせ)を充填する方法を採用している.脂肪組織や筋膜を採取するには新たな侵襲を加える必要があるし,鞍底形成の方法としてはいささか古いスタイルであることは否めない.
鞍底形成はアプローチ法にもよるが蝶形骨洞粘膜(文献2)や自家骨・軟骨が利用できるし,人工材料としてはコラーゲンシートやゼラチンスポンジ,フィブリン糊も利用できる.硬膜を1−2針縫合するだけでも術後髄液漏の予防になる.より,低侵襲な鞍底形成の方法も検討されるべきであろう.

執筆者: 

木下康之   

監修者: 

有田和徳

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