小児頭蓋咽頭腫に対する経蝶形骨洞手術

公開日:

2018年4月16日  

最終更新日:

2018年4月17日

Therapeutic outcomes of transsphenoidal surgery in pediatric patients with craniopharyngiomas: a single-center study.

Author:

Yamada S  et al.

Affiliation:

Departments of Hypothalamic and Pituitary Surgery, Tokyo, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:29600905]

ジャーナル名:J Neurosurg Pediatr.
発行年月:2018 Mar
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

近年,手術手技の向上と,内視鏡の導入によって,成人の頭蓋咽頭腫では経蝶形骨洞手術が頻用されるようになってきた(文献1,2).しかし,小児においては顔面骨の狭小さと,蝶形骨洞の未発達のため,経蝶形骨洞手術の導入は遅れてきた.虎の門病院のYamadaらは65例(女児28,男児37例)の小児頭蓋咽頭腫に対する経蝶形骨洞手術の経験をまとめた.初回手術は45例で再手術例は20例.平均年齢は9.6歳(0.8〜17.9).

【結論】

初回手術45例のうち,26例(58%)が鞍隔膜下腫瘍で,19例が鞍隔膜上腫瘍.肉眼的全摘出(GTR)は初回手術群で高かった(98% vs 75%,p=0.009).GTRが達成出来た症例では7.8年の経過観察期間で再発は12%で,初回手術群ではその頻度は少ない傾向であった(7% vs 27%,p=0.06).初回手術群では手術による下垂体前葉機能の悪化は80%,尿崩症の出現は83%で認められた.術後に発生した肥満は,初回手術で9%,再手術で21%であり,小児頭蓋咽頭腫に対する経蝶形骨洞手術では視床下部障害は比較的少ないことが示唆された.小児頭蓋咽頭腫でも経蝶形骨洞手術による全摘出は比較的安全に実施でき,一方再手術例では合併症も多くなるので,初回手術で全摘出を目指すべきである.

【評価】

本邦における下垂体手術の第一人者であるYamadaらの,経蝶形骨洞手術による小児の頭蓋咽頭腫の成果を開示したもので,敬服すべき手術成績である.
本論文によれば,小児の頭蓋咽頭腫であっても経蝶形骨洞手術によって,高頻度で肉眼的全摘を達成出来,その後の再発は,初発例では平均8年の経過観察期間で7%と稀である.また合併症についても許容範囲で,12例(18%)(髄液漏6例,髄膜炎3例,一過性記銘力障害2例,水頭症1例)で,重篤なものはなく,死亡例もなかった.
既に成人の頭蓋咽頭腫においては経蝶形骨洞手術あるいはその拡大法が(文献1,2),一般的に用いられているが,小児では狭い術野,未発達な蝶形骨洞のために腫瘍へのアプローチには制限が大きいこと,また,狭い術野での硬膜縫合を含めた鞍底の再建など,経蝶形骨洞手術の適応には躊躇されることが多い.著者らが言うように,蝶形骨骨髄は容易に掘削出来るので,現実的にはあまり障害にはならない.しかし,著者等の症例には5歳以下の症例も12例含まれている.5歳以下の症例では,内視鏡のシャフトの太さが前鼻孔とほぼ同じであるため,本レビュー執筆者(K.A.)は上口唇下粘膜切開でアプローチしてきたが,Yamadaらは,最近では,年齢にかかわらず,全て前鼻孔経由の内視鏡下手術を実施しているという.様々な関連技術の進歩と細かな工夫の積み重ねが,このような非侵襲手術を可能にしてきたものと思われる.
一方,再手術例では,少なからぬ合併症,視床下部障害も認められ,全摘率も低くなるので,初発例でこそ、このような中核的下垂体センターでの手術が勧められる.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

藤尾信吾

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