MRIにおける下垂体後葉のT1高信号は皆見えるのか

公開日:

2018年4月24日  

最終更新日:

2018年4月25日

Presence of the posterior pituitary bright spot sign on MRI in the general population: a comparison between 1.5 and 3T MRI and between 2D-T1 spin-echo- and 3D-T1 gradient-echo sequences.

Author:

Klyn V  et al.

Affiliation:

Department of Diagnostic and Interventional Neuroradiology, RWTH University Hospital Aachen, Aachen, Germany

⇒ PubMedで読む[PMID:29594809]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2018 Mar
巻数: [Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

Fujisawaらが発見した健常者に認められる下垂体後葉のT1高信号は(文献1),ADHを含む蛋白複合体(vasopressin–neurophysin II-copeptin complex)の貯留を反映しており,中枢性尿崩症患者では消失するため,画像による後葉機能の評価法として周知されてきた.しかし,健常者でもこの後葉高信号が見えない症例がある.その頻度は48%〜2.8%とバラツキが大きく,使用したMRI機種,撮像法,評価法によって大きな違いがある.Aachen大学のKlynらは健常者1017人(女性536人,男性481人)のMRI像を後方視的に検討し,使用機種(磁場強度:1.5T [64.51%] or 3.0T [35.5%]),撮像法(T1-SE echo with slice thickness 3 mm [67.5%] or 3D T1-GE with slice thickness 0.9 mm [32.5%]),年齢,性などの因子と後葉高信号の検出率の関係を検討した.

【結論】

全体として検出率は95.9%で,撮像機種(1.5T vs. 3T),撮像方法(T1-SE echo vs. 3D T1-GE)は検出率に影響を与えなかった.非検出率は高齢者で高く,40歳以下では0%であるのに対して,40〜69歳では6.3%であった(p<0.001).男性では女性よりも有意に非検出率が高かった(6.2% vs. 2.2%,p=0.01).
後葉高信号は健常者でも4.1%の頻度で見えない可能性があること,特に40歳以降や男性ではその可能性に配慮すべきである.

【評価】

下垂体後葉のT1高信号の非検出率が高いという報告は古いスタディーに集中しており(文献2),MRI機器の進歩によって,検出率は高くなってきており,3T-MRIマシンでの非検出率は2.8%まで低下している(Yamamotoら,文献3).Klynらの本研究でも使用機種(1.5 vs 3.0)や撮像法にかかわらず,下垂体後葉のT1高信号は高率に検出できることが明らかになった.一方,稀ではあるが(4.1%),健常者でも検出できない症例があること,特に40歳以降あるいは男性では,しばしば検出できないことについては,注意をはらう必要性がある.中でも,70歳以上では非検出率は15%を超える.その理由については,高齢者では一般に血漿浸透圧が高いので,ADH放出が持続的に促される結果,下垂体後葉の後葉内のADH複合蛋白の枯渇が起こるのではないかという推論がある.Yamamotoらも加齢と共に非検出率が高くなることを報告している(文献3).また,男性は女性に比較して血漿中ADHレベルが高い事が報告されており,これは後葉内のADHが血中に放出されやすいことを反映しているのかも知れない.
逆に,40歳未満の健常者では,男女を問わず,必ずT1高信号が検出されるということであり,やはり,T1高信号の検出(非検出)は臨床的な意義が高いということができる.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

藤尾信吾

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