免疫チェックポイント阻害剤による下垂体炎の早期診断:TSH測定の意義

公開日:

2018年5月21日  

最終更新日:

2018年5月31日

Fall in thyroid stimulating hormone (TSH) may be an early marker of ipilimumab-induced hypophysitis.

Author:

De Sousa SMC  et al.

Affiliation:

Endocrine and Metabolic Unit, Royal Adelaide Hospital, Adelaide, Australia

⇒ PubMedで読む[PMID:29380110]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2018 Jun
巻数:21(3)
開始ページ:274

【背景】

免疫チェックポイント阻害剤の1つであるイピリムマブ(ipilimumab)は各種癌に用いられているが,自己免疫性下垂体炎(IH:ipilimumab-induced hypophysitis)を高率に発症する.IHの早期発見は,重篤な結果を回避するために重要である.Royal Adelaide HospitalのDe Sousaらはイピリムマブが2回以上投与された46例の悪性黒色腫の患者を対象に,TSHあるいはコルチゾル血中濃度の変化とIH発生の関係を検討した.

【結論】

9例(20%)が,イピリムマブ投与開始後,中央値13週でIHを発症した.血中TSH値が80%以上低下した全員がIHとなった.9例中5例で,TSH値の低下は血中コルチゾル値の低下とIHの診断に先行した.4サイクル目投与前のTSH値は非IH群に比較してIH群で有意に低値であった(0.31 vs. 1.73 mIU/L,p=0.006).一方,1〜3サイクルのTSH値と1〜4サイクルのコルチゾル値は2群間で差が無かった.

【評価】

イピリムマブはCTLA-4に対するモノクロナル抗体で,T細胞活性化によって抗腫瘍効果をもたらし,切除不能な悪性黒色腫に対して生存延長をもたらしている(文献1).しかし,イピリムマブは様々な自己免疫疾患を引き起こし,なかでも10%以上の症例で,下垂体炎による汎下垂体機能不全を引き起こすことが知られるようになった(文献2).この下垂体炎の機序としてイピリムマブが下垂体細胞に異所性に発現しているCTLA-4と結合することがIwamaらによって報告されている(文献3).
イピリムマブ投与による下垂体炎の発生を早期に診断し,適切なタイミングで十分なホルモン補充を行うことは重篤な結果を避けるために必須である.本研究では,IH群ではイピリムマブ投与開始後9.2週,すなわちイピリムマブ4サイクル投与前の測定でTSHの急激な低下が認められることを示した.このタイミングは,IHの診断の3.6週前であった.各サイクル前のTSH測定が,IHの早期診断につながることを示唆した点で,臨床的に有用な情報であるが,後方視的研究であるために,TSHやコルチゾル測定のタイミングはまちまちであり,またfT4やACTHのデータも示されてはいない.今後前向き研究で検証する必要性がある.
一方,彼らの研究では,IH群では2サイクル目開始時にTSHの上昇傾向が認められている.Fajeらのシリーズでも同様の現象が認められており(文献4),TSH細胞障害によるTSH放出を反映しているのかも知れない.TSHの下降に先行する一過性上昇がIHの超早期警告サインとして利用出来るかどうかは,今後の検討課題である.

執筆者: 

藤尾信吾   

監修者: 

有田和徳

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