経蝶形骨洞手術周術期の予防的ステロイド投与は不要:前向きRCTの結果

公開日:

2018年10月30日  

最終更新日:

2018年11月1日

Withholding Perioperative Steroids in Patients Undergoing Transsphenoidal Resection for Pituitary Disease: Randomized Prospective Clinical Trial to Assess Safety.

Author:

Sterl K  et al.

Affiliation:

Divsion of Endocrinology, Metabolism, and Lipid Research, Washington University School of Medicine, St. Louis, Missouri

⇒ PubMedで読む[PMID:30325449]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2018 Oct
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

現在,なんとなく経験的に投与されている経蝶形骨洞手術周術期のステロイドであるが,本当に必要なのか検証されたことは少ない.セントルイス・ワシントン大学のSterlらは経蝶形骨洞手術予定の患者のうち,cosyntropin(ACTH 250 mg)-testによって下垂体―副腎皮質系が正常と判定された患者に,麻酔導入時100 mgハイドロコルチゾン静注後,6時間置きに0.5 mgデキサメタゾン静注4回群(STER,n=23)とステロイド非投与群(NONSTER,n=20)に無作為に割り付けた.

【結論】

手術翌日朝8時の血中コルチゾルのレベルはNONSTER群でSTER群より高かった(745 ± 359 nmol/L vs. 386 ± 193 nmol/L,p=0.001).退院時にステロイド投与がされている患者の割合は,STER群で多かった(42% vs 12%,p=0.07).高血糖,尿崩症,永続的な副腎皮質機能不全などの手術後の合併症を含む術後合併症の割合は2群間で差がなかった.

【評価】

術前に下垂体―副腎皮質系の障害がない患者における経蝶形骨洞手術後の一時的な副腎皮質不全は12%以下の頻度で発生するが,このリスクに対して,多くの施設で予防的なステロイド剤投与が行われている.一方,ステロイドの多面的な副作用の可能性や,手術後の下垂体―副腎皮質系機能の評価への影響のため,手術前の検査で副腎皮質機能不全と判定された患者にのみステロイドを投与するというプロトコールを採用する施設もある(文献1).しかし,これまでの報告はいずれも後方視的あるいは非ランダム化試験であるため,ステロイド剤非使用の功罪の正確な評価は困難であった.
Sterlらはこの問題に関する初めてのRCTで,術前評価で下垂体-副腎皮質系に問題のない患者では,周術期ステロイド投与は不要であることを明らかにした.逆に周術期ステロイド投与が,手術後のコルチゾルの分泌を抑制するために,退院時のステロイド補充患者の割合が高くなると推定している.
しかし,本研究の結果から周術期の予防的ステロイド投与が不要と断定するにはあまりに少ない症例数(43例)であり,今後,多施設での追試が必要である.
一方,下垂体外科医の関心は,大部分の患者がステロイドなしで問題なかったとしても,まれに手術によって引き起こされるかも知れない新たな下垂体―副腎皮質不全を正確に予想出来るかという点であり,今後,その課題への取り組みが必要となろう.

執筆者: 

木下康之   

監修者: 

有田和徳

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