先端巨大症に対するパシレオチドの効果も結局SSTR2の発現によって決まる:おいおいSSTR5はどうなったの ?

公開日:

2018年10月31日  

最終更新日:

2018年11月1日

Pasireotide responsiveness in acromegaly is mainly driven by somatostatin receptor subtype 2 expression.

Author:

Muhammad A  et al.

Affiliation:

Department of Medicine, Endocrinology section, Pituitary Center Rotterdam,Erasmus University Medical Center Rotterdam, the Netherlands

⇒ PubMedで読む[PMID:30346538]

ジャーナル名:J Clin Endocrinol Metab.
発行年月:2018 
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

先端巨大症のIGF-1コントロールにおいて,パシレオチドが第一世代ソマトスタチン誘導体(SRLs:オクトレオチド,ランレオチド)に比べて効果が高いことが報告されてきた.その効果は,第一世代ソマトスタチン誘導体が主としてソマトスタチン受容体2(SSTR2)のみに作用して効果発現するのに対して,パシレオチドはSSTR5など複数の受容体に作用してその効果を発現すると語られてきた.本当にそうなのか?Rotterdamエラスムス・メディカルセンターのMuhammadらは,SRLsによるIGF-1の低下作用,あるいは腫瘍における免疫組織学的なSSTR2およびSSTR5の発現とパシレオチドのIGF-1抑制効果の関係を検討した.対象は,先行するPAPE研究(文献1)で,24週間以上のパシレオチド長期投与が行われた52例.

【結論】

パシレオチドの有効性スコア(SRLsからパシレオチドに変更した時のペグビゾマントの減量や中止で評価)はSRLsによるIGF-1の低下率と正相関した(r=0.40,P=0.003,n=52).パシレオチドの有効性スコアはSSTR2免疫染色スコアはと正相関した(r=0.58,P=0.039,n=9)が,SSTR5免疫染色スコアは相関しなかった(r=0.58,P=0.039,n=9).

【評価】

この論文は,先に発表された“Efficacy and Safety of Switching to Pasireotide in Patients With Acromegaly Controlled With Pegvisomant and First-Generation Somatostatin Analogues (PAPE Study)”(文献1)で対象とした症例52例の二次解析結果である.先行論文の結論は,“第1世代ソマトスタチンアナログ+ペグビソマント(PEGV)の投与によりコントロール良好な先端巨大症患者において,第1世代ソマトスタチンアナログをパシレオチドに変更することによって,67.8%の症例でPEGVを中止できた”というものである.
一方,今回の研究では,パシレオチドの効果はSSTR5発現ではなくSSTR2によって左右されていることが明らかになった.
第一世代SRLsはSSTR2に強い親和性を有し,これへの結合を通してGH産生・分泌を抑制するが,臨床利用ではIGF-1の正常化は40%くらいしか達成できていない.一方,パシレオチドは,SSTR4を除くすべてのSSTRs(1,2,3,5)に対して親和性があり,SSTR2に対する親和性は低い(SRLsの約40%)が,SSTR5に対して特に強い親和性を示す(SRLsの39倍)(文献2).この違いによって,パシレオチドは第一世代SRLsが効果不十分な症例にも有効性を示し,head to head試験でもパシレオチドに軍配があがる(文献3)というストーリーは十分に理解可能であった.また,免疫組織学的にSSTR5が陽性ならパシレオチドが有効だが,陰性なら効かないという話もスッキリわかった(文献4).
しかし,今回,従来の“通説”を覆す結果が出たわけである.対象症例が既にSLRsとペグビゾマントが投与された症例であること,免疫組織学的な検討対象となったのが9例に過ぎないことなど研究デザインに付随する問題も大きい.今後,より大規模でかつ薬物療法ナイーブな症例を対象とした検討が必要である.
また,最近,ソマトスタチン誘導体の効果発現の程度にはソマトスタチン受容体をコントロールするアレスチンの関与が指摘されている(文献5).SSTRsの内在化も含めた,パシレオチドの効果に関する分子学的なダイナミクスの検討も必要である.

執筆者: 

木下康之   

監修者: 

有田和徳

メールで読みたい方はこちら

メルマガ登録する