アグレッシブなプロラクチン産生腺腫に対するエベロリムス:症例報告と培養系における検討

公開日:

2019年1月30日  

最終更新日:

2019年2月6日

Effect of Everolimus in Treatment of Aggressive Prolactin-Secreting Pituitary Adenomas.

Author:

Zhang D  et al.

Affiliation:

Deprrtments of Medicine, University of caIfornia, Los Angeles, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:30624667]

ジャーナル名:J Clin Endocrinol Metab.
発行年月:2019 Jan
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

アグレッシブなプロラクチノーマでは抗癌剤,放射線を含む種々の治療に抵抗性を示し,予後不良となるものも多い.mTOR阻害剤のエベロリムスは種々の神経内分泌腫瘍(NET)に対する有効性が報告されている.UCLAのZhangらは,アグレッシブなプロラクチノーマに対するエベロリムスの使用経験を報告し,他のプロラクチノーマ7例とラットGH3細胞株(GH+プロラクチン産生)を用いて,効果発現機構を検討した.

【結論】

カベルゴリン内服,複数回の手術,放射線に対して抵抗性のプロラクチノーマを有する68歳男性に対して,それまでのカベルゴリン0.75 mg/dayに加えてエベロリムス10 mg/dayの投与を開始したところ,5ヵ月目で血中プロラクチン濃度の低下と腫瘍の縮小が得られ,12ヵ月まで腫瘍径は安定していた.その後,血中プロラクチン値は上昇したが,投与前より低かった.本例を含む,プロラクチン産生腺腫の8例(ドパミン作動薬抵抗性3例を含む)の免疫染色では,細胞増殖に関わるmTORシグナル蛋白(p-AKT,p-S6,p-4EBP1)の高発現が認められた.GH3細胞株でも,エベロリムスは腫瘍増殖抑制とプロラクチン分泌抑制を示した.

【評価】

エベロリムスは腫瘍増殖シグナル経路であるmTORの阻害剤で,日本では2019年1月現在,アフィニトールという名前で販売され,根治切除不能又は転移性の腎細胞癌,神経内分泌腫瘍,手術不能又は再発乳癌,結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫,結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫に適応を取得している.
これまで,mTOR阻害剤のラパマイシンやエベロリムスの下垂体腺腫に対する効果に関しては培養細胞(GH3,AtT20,ヒト非機能性下垂体腺腫初代培養)において増殖抑制効果が示されているものの,臨床ではACTH産生下垂体癌の報告があるのみ(結果は無効)であった.本報告は,プロラクチノーマに対するエベロリムスの最初の使用経報告であるが,顕著な腫瘍体積の縮小効果を示した.培養細胞では,カベルゴリンとエベロリムスの相乗効果はプロラクチン分泌抑制に関しては認められたが,腫瘍細胞増殖抑制に関しては認められなかった.エベロリムスの有害事象としては,口内炎,皮疹,下痢,倦怠,貧血,感染症,高血糖などが知られているが,本例では高血糖,味覚障害,口内炎が認められたが,内服の継続は可能であった.また本症例を含む8例のプロラクチノーマの免疫染色では,細胞増殖に関わるmTORシグナル蛋白(p-AKT,p-S6,p-4EBP1)の高発現が認められたという.
mTORシグナルの活性化はアグレッシブなプロラクチノーマに特有なのか,アグレッシブな下垂体腺腫全般で認められる事象なのか,知りたいところである.
プロラクチノーマを含み,通常の治療に抵抗性のアグレッシブな下垂体腺腫に対してはテモゾロミドの使用が試みられてきたが,テモゾロミドの効果が持続しない症例も多い(文献1,2,3).アグレッシブな下垂体腺腫に対するエベロリムスの使用について,多施設共同研究が組まれる時期に来ているかも知れない.

執筆者: 

藤尾信吾   

監修者: 

有田和徳

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