下垂体移動によって下垂体機能はどうなるか:両側の下下垂体動脈凝固の影響

公開日:

2019年1月30日  

最終更新日:

2019年2月6日

Bilateral coagulation of inferior hypophyseal artery and pituitary transposition during endoscopic endonasal interdural posterior clinoidectomy: do they affect pituitary function?

Author:

Truong HQ  et al.

Affiliation:

Departments of Neurological Surgery and Otolaryngology, University of Pittsburgh Medical Center, Pittsburgh, Pennsylvania

⇒ PubMedで読む[PMID:30074461]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2018 Jul
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

下垂体を硬膜間で遊離して上方あるいは左右に移動させることによって,鞍背-斜台から脚間槽の視野が拡大して,同部の腫瘍の経鼻的な摘出が容易になるが(文献1,2),この時に,下下垂体動脈を選択的に凝固切断しておかないと,内頸動脈からの同動脈の引き抜きによってコントロール困難な出血を来す可能性がある.本論文は,下垂体の安全な移動にとって不可欠な両側の下下垂体動脈の凝固切断が,手術後の下垂体機能に与える影響を検討した.症例は経蝶形骨洞手術で両側後床突起切除を行った脊索腫などの腫瘍20例.手術前に下垂体機能障害があった6例は省いた.

【結論】

平均追跡期間は19ヵ月(13~84)で, 手術後 4例(20%)に尿崩症が起こった.2例は一過性尿崩症で,1例は遅発性でかつ恒久的な尿崩症を呈した.他の1例は恒久的な尿崩症と汎下垂体機能障害を呈した.これらの4例では,アクセス・アングル(下垂体底平面と下垂体底-腫瘍最頂点ラインが形成する角度)が,障害を伴わなかった患者に比較して大きかった (47.25°vs. 33.81°,p=0.071).後葉高信号は,下垂体機能が温存された患者の75%で認められた.

【評価】

下垂体後葉は,主として下下垂体動脈から栄養され,下垂体茎と下垂体前葉は主として上下垂体動脈(Loral artery)と下垂体門脈系から栄養される.したがって下下垂体動脈の両側性の凝固切断は,下垂体後葉機能の障害を高率に引き起こすことが予測されたが,実際には恒久的な尿崩症は10%にしか生じなかった.著者らは,良く知られている上-下下垂体動脈間の吻合によって,下下垂体動脈の凝固切断後も,下垂体後葉の灌流が維持されると推測している.4例で下垂体後葉機能障害を来したのは,血流障害というよりは,むしろ腫瘍摘出操作中の下垂体への機械的損傷によるもので,その根拠として4例ではアクセス・アングルが大きかった点を指摘している.アクセス・アングルが大きいということは,腫瘍がより上方,そして前方まで進展していることを意味し,その結果,充分な摘出操作空間を得るためには,下垂体をより大きく移動しなければならないことを意味している.
また著者らは,両側下下垂体動脈を凝固切断した場合に下垂体後葉への血流を維持するためには,鞍上部の操作の際に,上下垂体動脈を傷つけないように配慮する必要があることを指摘している.
良く分かるストーリーであるが,下垂体前葉機能については,どのような方法で評価されたか記載されていないので,論評の術がない.

執筆者: 

木下康之   

監修者: 

有田和徳

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