下垂体腺腫における腫瘍制遺伝子のプロモーターメチル化:35遺伝子の網羅的解析

公開日:

2019年2月12日  

最終更新日:

2019年2月12日

DNA methylation of Tumour Suppressor Genes in Pituitary Neuroendocrine Tumours.

Author:

Garcia-Martinez A  et al.

Affiliation:

Research Laboratory, Hospital GeneraI Universitario de Alicante Institute for HeaIth and Biomedical Reaearch, Alicante, Spain

⇒ PubMedで読む[PMID:30423170]

ジャーナル名:J Clin Endocrinol Metab.
発行年月:2018 Nov
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

下垂体腺腫ではドライバー遺伝子変異の存在が明らかなものは少なく,下垂体腺腫の発生と特徴的な形質の獲得には多数のエピジェネティックな変化が複合的に関与しているものと考えられている.これまでも幾つかの腫瘍抑制遺伝子発現と下垂体腺腫の関係が指摘されているが,網羅的な検索は少なく,その結果はしばしば相矛盾していた.スペインのチームは105例の下垂体腺腫(下垂体神経内分泌腫瘍,PitNET)を対象として,35個の腫瘍抑制遺伝子のプロモーター領域のメチレーションパターンと遺伝子発現を観察した.腫瘍のサブタイプ別の内訳はサイレント・ゴナドトロフ(sGT):35例,サイレント・コルチコトロフ(sCT):15例,機能性コルチコトロフ:15例,機能性ソマトトロフ:40例.

【結論】

プロモーターのメチレーションは,mRAコピー数解析とメチル化解析を一度に行うことが出来るMS-MLP法(文献1)で解析した.CASP8のハイパーメチレーションは全ての腺腫とサブタイプで最も頻度が高かった(92.3%).TP73のメチレーションはこれに次いで頻度が高く(27.6%),mRNAの発現と逆相関していた.対象腫瘍全体とコルチコトロフ腺腫では,MSH6とCADM1のメチレーション頻度は,マイクロアデノーマに比較してマクロアデノーマで高かった(すべてp<0.053).ESR1とRASSF1のメチレーションの頻度は,対象の腫瘍全体で,浸潤性腫瘍より非浸潤性腫瘍で高かった(p=0.054とp=0.031).

【評価】

癌やその他の腫瘍の多くで,各遺伝子のプロモーター領域にあるCpGアイランドの異常なメチレーションによって,がん(腫瘍)抑制遺伝子の転写が抑制されていることが知られている.本研究では,いくつかの腫瘍抑制遺伝子プロモーターのメチレーションが高頻度に検出され,腫瘍発生に関わりを有していることが示唆された.また下垂体腫瘍のサブタイプ毎で,その頻度は異なっており,プロモーター・メチレーションが臨床像(functionalityやinvasivenessなど)の発現に影響していることも示唆された.
CASP8はアポトーシス,TP73は遺伝子修復とアポトーシス,MSH6はDNAミスマッチ修復,CADM1は細胞接着,RASSF1は細胞周期制御に関わる遺伝子であり,ESR1はエストロゲン受容体遺伝子である.これらの他,対象症例の中で,プロモーター・メチレーションの頻度が高かったのはTP53,KLLN,MGMT,PAX5,GATA5であった(>10%).
この結果は他施設での追試が必要であるが,本研究で明らかになった腫瘍抑制遺伝子のメチレーションが確認されれば,やがて,特異的なDNA脱メチル化によってこれらの遺伝子が再活性化され,腫瘍の性質の変化(浸潤性の抑制や再発の抑制)が可能になる日が来るかも知れない.
なお,本稿で使用されている用語“下垂体神経内分泌腫瘍(PitNET)”は従来の下垂体腺腫と同じである.2016年のInternational Pituitary Pathology Club Meeting(Annecy,France)で,下垂体腺腫を,膵臓や消化管に出来る神経内分泌腫瘍(PNET)と同一の疾患概念に統一することが決まり(文献2),最近,主として欧州からの報告ではこの疾患名(terminology)が用いられている.

執筆者: 

藤尾信吾   

監修者: 

有田和徳

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