公開日:

2019年2月12日  

最終更新日:

2019年2月12日

An Institutional Experience of Tumor Progression to Pituitary Carcinoma in a 15-Year Cohort of 1055 Consecutive Pituitary Neuroendocrine Tumors.

Author:

Alshaikh OM & Asa SL  et al.

Affiliation:

Department of Medicine, Princess Margaret Cancer Centre, University Health Network and University of Toronto, Toronto, Ontario, Canada

⇒ PubMedで読む[PMID:30706322]

ジャーナル名:Endocr Pathol.
発行年月:2019 Jan
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

下垂体癌は転移を示す下垂体腺腫と定義されているが,実際にどのくらい頻度で起こるのか,また臨床像はどうなのか,real worldでの実態は不明である.トロント大学のチームは過去15年間に手術した自験の1,055例の下垂体腺腫(下垂体神経内分泌腫瘍,Pit-NET)の中での下垂体癌の経験を報告している.

【結論】

下垂体癌は4例(0.4%)であった.全例女性で,発症時年齢は23~54歳.初診から下垂体癌の診断までは3~14年.2例はクッシング病(1例はCrooke細胞腫瘍),1例はプロラクチン産生腺腫(sparsely granulated),他の一例は非機能性のpoorly differentiated PIT-1 lineage tumorであった.初期病理像で,いずれもKi67が高いこと(4.7,10,15,20%)を除けば,悪性を示唆する病理所見はなかった.外照射,内照射(PRRT),ソマトスタチン作動薬,テモゾロミド,エベロリムスなどの治療が試された.Crooke細胞腫瘍の1例のみ初診後18年で死亡している.

【評価】

世界的な下垂体センターにおける下垂体癌の頻度と臨床像の報告で,下垂体腺腫(Pit-NET)全体に占めるその頻度は0.4%であった.ドイツ下垂体レジストリー(2005〜2012年)に登録された4,232例の下垂体腺腫に占める非定型下垂体腺腫(atypical adenoma)の頻度は2.9%で,下垂体癌の頻度は0.2%であった(文献1).
本論文の4例のうち2例がACTH系,1例がプロラクチン系,1例は従来silent subtype 3 adenomaとよばれていたPit-1系のaggressive adenomaであった.
ちなみにWHO-END2017では,従来の異型下垂体腺腫(atypical adenoma)に代えて,再発しやすい腫瘍(aggressive adenoma)として,具体的に①増殖能の高い(Ki-67高値,カットオフ値は設定していない)腫瘍,②Sparsely granulated somatotroph adenoma,③Lactotroph adenoma in men,④Silent corticotroph adenoma,⑤Crooke cell adenoma,⑥Plurihormonal PIT-1 positive adenoma(silent subtype 3 adenoma)が挙げられている.本論文の4例のすべてでKi-67は4.7%以上で,そのうち3例は10%以上であった.WH-END2017ではKi-67のカットオフ値は示されていないが,10%を超えるものでは,やはり相当注意して臨床経過を追跡すべきことを示唆している.本論文の考察では,下垂体癌の発生に関わる遺伝子変異として,RAS,ATRX,PTEN,Tp-53,Rb などが取り上げられている.
4例に対する治療として,実際に行われたのは,外照射,ドパミン作動薬,ソマトスタチン作動薬,テモゾロミド,カペシタビン,エベロリムス,スニチニブ,ベバシツマブならびにPRRT(peptide receptor radionuclide therapy ;ペプチド受容体放射性核種療法)による内照射である.これらの治療法の選択にはアグレッシブなNETに対する治療を参考していると思われ,CAPE/TEM(カペシタビン/テモゾロミド)はカペシタビンによるMGMT枯渇作用を狙ったコンビネーションである.PRRTも,NETに対する新しい治療法として発展してきているもので,ソマトスタチン作動薬に放射性物質を結合した化合物の投与により,ソマトスタチン様作用と放射線内部照射効果を狙った治療法である.放射線核種としては 111-インジウム90や177-ルテチウム90などが用いられている.
既にルテチウム-177標識ソマトスタチンアナログ(Lu-177-DOTA-TATE)注射液(商品名ルタセラLutathera®)は,ソマトスタチン受容体を発現するアグレッシブな胃腸膵臓神経内分泌腫瘍(GI-NET)に対して,EUに続き,2018年1月にFDAで承認されている.日本では2019年1月現在,1/2相試験が進行中である.
2016年に,下垂体腺腫はNETの一部として取り扱うことが(pit-NET),世界的な下垂体病理のエキスパート達によって決定された(文献2).したがって,難治性,転移性の下垂体腺腫(アグレッシブなpit-NET)に対する治療法の開発は,アグレッシブなNETに対する治療法の開発と歩調を合わせることによって,大きく発展する可能性がある.

執筆者: 

木下康之   

監修者: 

有田和徳

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